仙台中央署での取り調べ中に逃走し、追い詰められて出頭したドイツ人の男は、ホテル従業員を殴った逮捕容疑のほかにも、数人を殴っていた疑いが浮上している。粗暴癖があると報じられているが、いったい何者なのか。
自称大学生というシューツ・ペトロ・ウラジミロビッチ容疑者(25)は、指名手配写真を見ると、黒縁のメガネをかけ、やや神経質そうには見える。
「金を盗ったうえに3発も殴ってきた」
しかし、そもそもの逮捕容疑は、それからでは想像もできない、かなり不可解で粗暴なものだった。
報道などによると、ウラジミロビッチ容疑者は2013年10月30日夜、宿泊しようとしたJR仙台駅前のホテルで、男性従業員2人を殴ったり蹴ったりする暴行を加えたとされる。2人は頭などにケガを負い、1人は左目奥の骨を折る大ケガをした。その結果、31日夕になって傷害の疑いで緊急逮捕されている。
ウラジミロビッチ容疑者は、10日前にこのホテルに宿泊し、ラーメンの無料サービスを知らされなかったとしてクレームを付けていた。その後も、3、4回訪れて苦情を言っていたといい、暴行もホテルに腹を立てたかららしい。ネット上では当時、なぜこんなクレームで暴行までするのかと話題になった。
今回、指名手配写真が報じられると、ツイッターなどでは、逮捕前にウラジミロビッチ容疑者に会ったという目撃情報が相次いだ。
東北大医学部3年の男子学生は、自らのツイッターで、医学部敷地内で10月30日に信号待ちをしていたところ、金を盗ったうえに殴ってきた外国人がおり、それはウラジミロビッチ容疑者だったと明かした。
学生のツイートによると、当時盗まれて外国人と口論したところ、外国人が3発も殴ってきたというのだ。学生はアゴにケガをし、警察に通報したところ、宮城県警がヘリまで出動させて外国人を追跡したのだそうだ。
牛タン専門店のチーフら2人も暴行受ける?
東北大医学部のこの学生は、外国人について、「一見、知的な見た目で聡明な留学生に見える」とし、「頭は良いらしく、何カ国語か話せて、取り調べの過程で日本語も覚え出して徐々に話し始めてるらしい」ともした。
仙台北署では、取材に対し、学生からの被害届は受理していることを認めた。容疑者については、背の高い白人系だと聞いているだけで、まだ特定していないという。しかし、ウラジミロビッチ容疑者による犯行の可能性が高いとみて、捜査している。東北大医学部の教務係では、学生の被害状況について確認中だと取材に答えている。
このほかにも、仙台市内の美容系専門学校1年だという女性も、ツイッターでウラジミロビッチ容疑者から被害を受けた人がいると報告した。
この女性は、以前にウラジミロビッチ容疑者から友だちとともに絡まれたことがあると明かした。一緒にいたアルバイト先の仙台駅前牛タン専門店のチーフら2人が女性らを助けようとしたところ、殴られてケガをしたというのだ。ウラジミロビッチ容疑者は、そのまま逃走したという。
日本人の知り合いを頼って来日していた
暴行のケースではないが、ツイッターでは、ウラジミロビッチ容疑者と話したと明かす人もいた。
仙台市内の予備校に通うという男性(18)は、2013年10月22日にウラジミロビッチ容疑者とみられるドイツ人と仙台駅西口にあるステンドグラス前で30分ほど話したという。当時のツイートには、ツーショット写真もアップしていた。日本語は片言だったというが、仕事で来ていることや今どきの女性のことなどを英語で話したそうだ。男性は、「悪い人じゃなさそうだったので余計残念です」と漏らしている。
宮城県警の刑事総務課によると、ウラジミロビッチ容疑者は、パスポート上では、生まれはウクライナになっており、小学生のときに両親とドイツに移住したという。日本には、10月16日に3か月の観光ビザで入国した。本人は、日本人の知り合いを頼って来たと供述している。来日後は、仙台市内にいたことは分かっているが、何をしていたのかなどは、取り調べ中に逃走したため不明のままだという。
本人は切れやすいタイプではないかとしているが、粗暴癖の詳細については分からないとした。ホテルでの暴行以外の余罪については、現在捜査中だとしている。