後退した甘い法案なのに、一部の幹部公務員から反発
第三に国家戦略スタッフ・政務スタッフ。かつての改革プランでは、官邸に国家戦略スタッフ、各大臣のもとに政務スタッフをおき、重要政策の企画立案をサポートすることとしていた。また、人数にも制限を設けず、政権の判断で実効性のあるチームを形成できることとしていた。
しかし、今回の政府案では、(1)国家戦略スタッフは既存の総理補佐官をもって置き換えることとし(増員なし)、(2)政務スタッフは、各省1人の大臣補佐官としている。政策の企画立案サポートは一定規模のチームで行うことが不可欠であり、これも不十分だ。
第四に公募制度。かつての改革プランでは、公募制度の導入は、重要な柱のひとつと位置付けられていた。具体的な数値目標を定める等の規定を設けていた。しかし、今回の政府案では、これらの規定が削除されている。これでは、公募導入の推進は期待できない。
第五に天下り・現役出向。政府案では、かつての改革プランにはなかった「人事交流の対象となる法人の拡大、手続の簡素化」という規定が盛り込まれている。
2010年に民主党政権のもとで、いわば天下りに代わる抜け道として、現役出向を拡大する方針を示す「退職管理方針」が決定されたが、この規定は、同方針に沿って現役出向を拡大するための規定だろう。「退職管理基本方針」は、かつて野党時代の自民党から批判があったとおり、「天下り禁止」という第一次安倍内閣以来の方針を覆そうというものである。これでは、「天下り禁止」という方針に全く逆行することになる。
こんなに後退した甘い法案なのに、それでも一部の幹部公務員から反発があるという。どうも病魔は幹部公務員に潜んでいるようだ。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2005年から総務大臣補佐官、06年からは内閣参事官(総理補佐官補)も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「財投改革の経済学」(東洋経済新報社)、「さらば財務省!」(講談社)など。