震災関連写真や絵画、アーカイブに【岩手・大槌町から】(20)

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大槌町の町並みを背に走るSL=1969(昭和44)年、井原実氏撮影
大槌町の町並みを背に走るSL=1969(昭和44)年、井原実氏撮影

   京都市の鉄道愛好者から大槌町を走るSLの写真、岩手県八幡平市の画家から被災した消防車の水彩画がそれぞれ、この10月、町に寄贈された。いずれも、震災の無残さを訴えかける作品で、鑑賞する人の胸を打つ。町は、震災に関連したアーカイブの資料として保存、展示していく。


   写真を寄贈したのは京都市の佐竹保雄さん(81)。学生の頃から鉄道写真を始め、京都市役所に勤務しながら、全国各地を巡ってSLを撮影した。東北地方には46回、足を運び、「東北を旅して―模型列車に乗って東北へ行こう」と題した催しを、2011年夏から2013年3月まで京都で5回開催した。東北の鉄道写真を展示し、模型を運転した。2005年には福音館書店から、「おじいちゃんのSLアルバム」を出版した。

   佐竹さんは、被災地を支援したいと、写真を大槌町に寄贈することを思い立った。所属する同志社大学鉄道同好会OB会の所属メンバーに呼びかけ、大槌町に関連する写真3点をそろえた。町並みを背に走るSL、鉄橋を渡るSL、大槌駅のプラットフォーム。震災で、町並みや鉄橋は消失し、プラットフォームは面影もない。佐竹さんの妻の紀美子さん(74)は写真を寄贈するため、10月9日、町役場に碇川豊町長を訪ね、「思い出の写真で、被災地の皆さんを元気づけることが出来たらうれしい」と話した。

大槌駅のプラットフォーム=1972(昭和47)年、福田静二氏撮影
大槌駅のプラットフォーム=1972(昭和47)年、福田静二氏撮影
大槌川の鉄橋を渡るSL=1968(昭和43)年、佐竹保雄氏撮影
大槌川の鉄橋を渡るSL=1968(昭和43)年、佐竹保雄氏撮影

   八幡平市の画家佐々木君江さん(65)は10月28日に大槌町を訪れ、津波で被災した消防車を描いた水彩画「あなたを忘れない」を町に寄贈した。

   佐々木さんは全国の美術家団体「示現会」の準会員、岩手県内の「エコール・ド・エヌ」の会員で、水彩で風景画を描く。昨年6月、震災後、初めて大槌町を訪れ、壊滅した中心市街地に取り残された赤い消防車の残骸を見た。大槌町では多くの消防団員が殉職している。鎮魂の思いを込め、震災を象徴する存在として描こうと、絵筆を取った。

被災した消防車を描いた水彩画と佐々木君江さん=2013年10月28日、大槌町中央公民館
被災した消防車を描いた水彩画と佐々木君江さん
=2013年10月28日、大槌町中央公民館

   絵は100号(162.1センチ×112.1センチ)の大きさで、今年3月に完成した。鉛色の空を背景に、遠景として、被災した御社地ふれあいセンター、旧町役場が配置されている。

   佐々木さんは「『あなたを忘れない』という題名には、犠牲になった方々を悼む思いを含め、様々な意味合いを込めました」と語った。

   寄贈された絵画は11月2日~4日、城山公園体育館である町民文化祭で展示された。佐々木健生涯学習課長は「震災を風化させないアーカイブの資料として、時々、展示しながら、大切に保管したい」と話している。

(大槌町総合政策課・但木汎)


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