米グーグルが、交流サイト(SNS)「グーグルプラス」と動画投稿サイト「ユーチューブ」の「統合」を2013年11月上旬に実施した。共通のIDで両方を管理できる仕様に変更したのだが、ユーチューブ上の動画に寄せるコメントをめぐって、利用者を戸惑わせているようだ。
ユーチューブ創業者ジョード・カリム氏も「おかんむり」で、不満をあらわにしている。
「恥ずかしい書き込み」読まれたらどうしよう
これまでユーチューブの利用者は、自分のアカウントを設定してサイトにログインし、動画を投稿したりコメントを書き込んだりした。この方式を変更し、グーグルプラスのアカウント利用を義務付けたのだ。実際にユーチューブにログインしようとすると、「アカウント1つですべてのGoogleサービスを」という画面が表示される。グーグルプラスの登録情報を入力しろ、ということだ。
効果として期待できるのが、ユーチューブ上の悪質なコメント減らしだ。これまでは誹謗中傷や、スパムのような動画内容と全く関係のない内容をしつこく投稿されるケースがあり、しばしば問題視されていた。
SNSのグーグルプラスでは、実名での会員登録を推奨している。「フェイスブック」もそうだが、実名利用者が多ければ会員間で知人を見つけやすくなり、交流が広がるメリットがある。しかもユーチューブに書き込む際も、実名が公になっている状態ではいわゆる「荒らし行為」はやりにくい。もちろん偽名を使って登録すれば悪質投稿は可能だが、ある程度の抑止効果は期待できそうだ。
グーグルプラス上でも、自分の気に入ったユーチューブ動画を共有してコメントを入れられるのだが、書き込んだ内容が同時にユーチューブ本体のサイトにも反映される。しかも、どうやら過去に共有した動画のコメントすべてが対象になっているのだという。これが一部の利用者を困らせている。
グーグルプラスの場合、投稿内容の公開範囲をある程度制限できるので、誰が閲覧しているかは想定できる。だがユーチューブにアクセスしているのは不特定多数だ。これだと、自分が過去にグーグルプラス内で共有した動画に「恥ずかしい」コメントを書き込んでいた場合に、知らない人にも読まれている可能性が出てくる。冗談だと分かってくれる仲間が見ているうちは問題ないが、会社の上司や交際中の相手など「見られたくない人」に見られたらどうしよう、というわけだ。
「統合」なんて言ってサイトぶち壊し、だから怒りを歌に
「統合」に不満げな人はほかにもいる。ユーチューブ共同創業者のカリム氏は、11月初旬にユーチューブの自身のページにこう書き込んだ。
「動画にコメント入れるのに、なんでグーグルプラスのアカウントが必要なんだよ、ばかばかしい」
カリム氏が、オンライン決済サービス「ペイパル」勤務時代の同僚だったスティーブ・チェン氏と共同でユーチューブを立ち上げたのは2005年。その後、自身は一線から身を引いて相談役の形で協力していたが、ユーチューブは2007年にグーグルが買収した。今回の書き込みは、2005年4月に自身が米サンディエゴの動物園を訪れたときに撮影した動画を公開して以来、実に8年ぶりのもの。今や経営上は関係ないとはいえ、自らが開発したサービスだけに今回の措置はよほど頭にきたのかもしれない。
さらにストレートに怒りをあらわにする利用者がいた。英国在住のエマ・ブラックリーさんは「グーグルプラスへの私の思い」と題した自作の曲をユーチューブで公開した。ウクレレをかき鳴らしながら歌うその歌詞は、辛らつだ。
「今朝起きてツイッターをチェックしたわ。次にフェイスブックに天気の話題を書いたの。で、お次は友達のグーグルプラスの最新記事を確認…ううん、見なかったわ。だって、グーグルプラスってクズだもの」
ブラックリーさんは「ユーチューブシンガー」、つまり自身が歌う動画を頻繁に投稿する女性だ。その目には、今回のグーグルプラスとの統合は「改悪」と映ったようだ。「くたばっちまえ、グーグルプラス。『統合』なんて言ってサイトをぶち壊し。だから私は怒りを歌に変えるの」と続け、「ヤフーに頼んで直してもらってよ」と皮肉る。見たい動画は見られない、動画へのレスは死んだ、「つながり」がないとコメントも残せないなんて、いったいどうなってるのよ――。歌い終わった後で「今回の(統合という)変更は本当におかしいから、こんな歌をつくった」と話し、「グーグル(の責任者)に会いたいわね、そうなったら楽しいはずよ」と笑った。