低迷が続くミクシィの決算発表会見が、ITを専門にするメディアの不興を買っている。リストラで「追い出し部屋」の存在が指摘されるなか、朝倉祐介社長は「通常の人事異動」としか説明せず、会見後の囲み取材を拒否して足早に会見場を後にしたからだ。
大半のIT系のメディアはネット上のサービスについて激しく批判することは少なく、むしろ「応援」する立場になることもある。それだけに、これだけ多くのメディアが不快感を表明するのは異例だ。
SNSの広告収入は7割減少
2013年11月8日に発表した13年4~9月期の連結決算では、最終損益が前年同期の12億500万円の黒字から13億5200万円の赤字に転落。4~9月期としては初めて赤字を計上した。売上高は41.6%減の39億7900万円だった。スマートフォンへの対応が遅れ、広告収入が落ち込んだのが原因だ。特にSNS「mixi」の広告収入は70.3%減の8億1000万円。課金収入も26.1%減の26億5400万円だった。
決算会見では、朝倉社長が、
「会社としては、利益を出さないとどうしょうもない。どれだけいいことをやっても、利益を出さないことにはネガディブに伝えられる。そうした考えのもと、一刻も早く、こうした不健全な赤字から脱却していきたい。断固とした思いで赤字の削減を目指す」
と不退転の決意を述べた。中国拠点の閉鎖で人件費が削減できたという説明があったものの、人員削減でコストを圧縮するという方針は明らかにされなかった。逆に、一連の騒動を念頭にしたリストラに関する質問には、「一切やっていない。通常の人事異動だ」と主張した。
社員の幸福度に関する質問も出た。荻野泰弘最高財務責任者(CFO)が、半期ごとに幸福度に関するアンケートをとっており、50問中47項目が1年前よりも改善していると説明した。
囲み取材を拒否、質問を無視して立ち去る
企業の決算会見では、会見後も登壇者が会場に残って記者の質問を受け付ける「囲み取材」が行われることが一般的だ。だが、今回の会見ではこの囲み取材が行われず、朝倉社長と荻野CFOが記者からの質問を無視する形で会見場を後にした。各社は相次いで、この対応を批判している。
CNETは、ミクシィが「全ての人に心地よいつながりを」というミッションを掲げてきたことを引き合いに、「『つながり』を断ったミクシィ」という見出しを掲げた。東京IT新聞は、
「外部に対する説明不足が目立ったが、社内に対しても十分に説明できているのだろうか」
と指摘。「IT戦士」として知られる岡田有花記者は、古巣のITMediaに寄稿した記事で、
「記者は長年ミクシィの決算会見に出席しているが、社長が囲み取材を拒否し、質問を無視して立ち去ったのは初めて。『すべての人に心地良いつながりを提供する』とうたうSNS企業の社長が、記者たちとのつながりを拒否した格好で、取材陣には強い不信感が残った」
と不快感をぶちまけた。
また、会見場がセミナールームだった点も問題視された。人事異動を言い渡された社員の新たな職場がセミナールームだからだ。会見の日には、セミナールーム勤務の社員には特別休暇が与えられた模様だが、この点を東京IT新聞では
「説明会の開催程度で休暇となるということ自体が『通常の人事異動』で配属される部署ではないことを証明しているようなものだ」
と指摘している。