フィリピン襲った恐怖の「気象津波」 「吸い上げ」と「吹き寄せ」で4、5メートル高波

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伊勢湾台風では最高潮位3.9メートルに達する

   台風により沖合から海岸に向かって強い風が吹くと、海水は海岸に吹き寄せられて海岸付近の海面が上昇する。潮位の上昇は風速の2乗に比例し、風速が2倍になれば海面上昇は4倍になる。これが吹き寄せ効果だ。さらに遠浅の海や、風が吹いてくる方向に開いた湾の場合、地形が海面上昇を助長させるように働き、特に潮位が高くなると説明されている。

   レイテ島の場合、台風の進路にあたる東側にレイテ湾が向いている。中心都市のタクロバンは、湾の奥にあたる場所に位置するため、条件はますます悪い。吸い上げ効果で潮位が上がっているところへ、上陸時には最大風速65メートル、最大瞬間風速は90メートルに達するほどの台風の猛烈な風力により、吹き寄せ効果は巨大だったと推測される。4~5メートルの高波が絶え間なく押し寄せ、防潮堤を超えて海水が島になだれ込み、沿岸部を飲み込んでしまったのだろう。

   東京大学大学院工学系研究科の佐藤慎司教授は、11月10日放送のNHK「ニュース7」で、この種の高潮について「場合によっては気象津波とも呼ばれる」と説明した。

   「気象津波」については、広島工業大学環境学部の田中健路准教授が同大学のウェブサイトで説明している。気圧や風の変化で、外洋では高さ数センチ、波長数10キロの非常に緩やかな海面の変化が起こる。これが、地震により発生する津波と同じメカニズムで沿岸に近づき、流れの速い2~3メートルの波として押し寄せるというのだ。

   田中准教授によれば、気象津波は、天気図では表されない程度の微小な気圧のゆらぎが、海面を変形させ、波の進行と気圧のゆらぎがほぼ同じ速さ・向きに進む共鳴効果で次第に波高が高くなり、波の周期と湾の固有振動周期と重なると更に波が高くなるというもの。発生する気象条件は温帯低気圧や前線、高気圧の張り出しなどで異なり、国内的にも国際的にも、厳密な定義の確立までには至っていないという。今回の台風に関しては、高潮、高波および島や海岸の地形による要因を主として捉え、副次的な要因として台風内部の気圧や風のゆらぎによる波の共鳴効果の可能性を必要に応じて検証すべきとしている。

   日本でもかつて、台風による高潮で多くの犠牲者が出たケースがある。1959年9月下旬、紀伊半島に上陸した「伊勢湾台風」は、特に三重県から愛知県にかけての伊勢湾沿岸地域に甚大な被害を与えた。死者は約4700人に達する。気象庁によると名古屋港では、高潮による潮位上昇は3.5メートルに及び、最高潮位は3.9メートルという国内最大級の高さに達した。この高潮が、国内で史上最悪と言われる台風による災害につながった。

(2013年11月21日11時40分、追記)

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