終身雇用が崩壊しているのに、労働法制は変わらず
業績が悪化したとき、在庫を減らしたり工場などを閉鎖したりすればコストは削減できるが、解雇は至難の業。社員は辞めない限り給与を支払わなければならないわけで、これは会社にとって大きなリスクになる。
厚生労働省は現在、景気が悪くても雇用を維持してもらうため、会社に助成金を出しているが、社員が「辞める」というまで雇用し続けなければならないとなれば、新規採用も後ろ向きになるかもしれない。
会社にしてみれば、「整理解雇の4要件」をクリアするまで時間がかかれば、会社自体が潰れてしまう恐れもある。割増退職金の負担もあるだろう。それもあって無理にでも自主的に退職してもらいたい、というわけだ。
経営コンサルタントの大関暁夫氏は、「現実には『終身雇用』が崩壊しているのに、労働法制だけがその時代を引き摺っていることに問題があります」と指摘する。
「雇用の流動化が当たり前になるなか、本来は経営者にとっても必要なときに働いてほしい人材が辞めてしまうリスクがあるのに、労働者は立場が弱いということだけでそこは目をつむったり、終身雇用に守られる人がいる一方で新卒採用が抑制されるなど、本来あるべき人材の流動化が損なわれていることも問題です」と話している。