B787のバッテリートラブルも影響
こうした日航の姿勢の変化に、ボーイングの最大のライバル、エアバスが機敏に動いた。エアバスの経営陣は、稲盛氏をはじめ日航経営陣との接触を重ね、日航に対する有利な条件を提示するなどした結果、ボーイングの牙城切り崩しに成功したとされる。
ボーイングが世界市場に投入した最新鋭中型機ボーイング787のバッテリーに絡むトラブルが「日航によるエアバス社への傾注を後押しした」(航空関係者)との見方も根強い。全日本空輸と並び、世界に先駆ける形で787を導入した日航は、787のトラブルの原因究明が遅れる中、約4か月半もの長い間、787の運航停止で苦しんだ。エアバス機の導入でリスク回避を図ろうという考えが働いたのも当然といえる。
ただ、787は「準国産機」と呼ばれるように、機体の35%を日本企業が製造し、日本の技術力で成り立った航空機。ボーイングによる日本企業への信頼と期待があるためだが、「その背景には、日本の航空業界でのボーイング社の高いシェアがある」(航空関係者)との見方は強い。日航の機材調達戦略の転換は、日航自身の今後の経営だけでなく、日本の航空産業全般にどう響いてくるか、関係者は注意深く見守っている。