賃上げがないと消費は冷え込む
ただ、上昇要因には、「良い上昇」とは言えないものも少なくないし、今後、持続税があるかにも疑問符が付くものがある。
9月の指数を子細にみると、例えばパソコンなどと並び、指数を下支えしているのは、値下がり続きでデフレの象徴とされてきたテレビ。9月は3.7%下落とマイナスが続くものの、下げ幅は地上デジタル放送への移行直後だった2011年9月の25.3%などから考えると大きく改善している。これは「4Kなど高付加価値製品へのシフトで単価がアップしている」(ソニー)ほか、消費増税前の住宅購入の増加で、引っ越しに伴う買い替え需要が要因とみられる。
パソコンなどは部品の大半を輸入して組み立てる ため、メーカー各社が今春から円安によるコスト増分1万~2万円を製品価格に転嫁しているとされる。こう見ると、テレビもパソコンも、消費者の購買意欲が本格的に回復しているかは疑問も残り、今後も持続的な需要増が期待できそうもない。その意味で、需要増に伴う「良い物価上昇」とはいえない。
特に消費税率が引き上げられる2014年度の見通しは慎重な見方がシンクタンクにも強い。消費税率引き上げに伴う景気減速は必至で、影響はや円安効果の一巡なども含め、物価の伸びは頭打ちになると予想され、民間エコノミスト約40人が予想する2014年度の物価上昇率は平均0.76%と、日銀が目指す「2%上昇」は難しいとの見方が大半だ。
そこでカギを握るのは、やはり今後は賃金の上昇だろう。物価だけが上がれば家計を圧迫し、消費は冷え込む。春闘で賃上げ率が1%になった場合、コアCPIを0.5~0.6ポイント押し上げるとの試算もあるものの、「現段階で大幅な賃上げは展望しにくい」(エコノミスト)との見方が一般的で、デフレ脱却は簡単には見通せない。