被災地の歌姫がセカンドアルバム【岩手・大槌町から】(19)

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大槌町内で開かれたミニコンサートで歌う臼澤みさきさん=2013年10月14日
大槌町内で開かれたミニコンサートで歌う臼澤みさきさん=2013年10月14日

   大槌中学校3年生の歌手臼澤みさきさん(15)が、歌手デビューしてから1年余が過ぎました。学業と歌手を両立させながら、全国へと歌声を届け、被災者を励まし続けています。10月23日にセカンドアルバム「里唄」、サードシングル「八重の風」を同時発売しました。来春は高校生。新たな飛躍の時を迎えようとしています。


   臼澤さんは2012年7月、「故郷(ふるさと)~Blue Sky Homeland~」で歌手デビューし、この年の第45回日本有線大賞新人賞、第54回日本レコード大賞新人賞を受賞しました。

   デビューしてから1年4か月が過ぎ、こう振り返りました。「今年4月から中学3年生になって勉強のレベルが上がり、両立が大変だなと思ったことがありました。でも、バランスをとることができ、楽しい1年間でした。学校では授業に集中し、習ったことを授業中に頭に入れるように努力しています」


   小学校3年生の時から民謡を習い、2010年の第49回青少年みんよう全国大会で、「南部馬方節」を歌ってグランプリを受賞しました。民謡を基調とした本格派の歌手として期待されています。「民謡を習って良かったと、いつも思っています。発声だったり、こぶしだったり、民謡で習った要素をいかして、民謡でもない、ポップスでもない、独自のジャンルを築いていけたらいいな、と思っています」


   震災は大きな転機になりました。自宅は山あいにあったため、津波の被害を免れました。しかし、多くの知人、友人が被災しました。避難所をまわり、民謡を歌って励ますと、被災者は、手拍子をし、涙を流し、感激してくれました。「歌の強さを感じました。震災前は歌えることが当たり前だと思っていました。震災後は歌えることがありがたいことだと感謝するようになりました」


インタビューに答える臼澤美咲さん=2013年10月14日、大槌町
インタビューに答える臼澤美咲さん=2013年10月14日、大槌町

   来春、中学校を卒業します。「どこに進学するかは、まだ、決まっていませんが、高校にも、大学にも進学したいです。高校生になれば、専門的な音楽の勉強をしていきたい。伝える歌ではなく、心に響く歌を歌いたい。将来は作詞をし、私にしか歌えないような歌を歌っていきたいです」


   「被災地の歌姫」「復興の歌姫」と呼ばれるみさきさんは、故郷の風景を思い浮かべながら歌っているそうです。本名の「岬」(みさき)は、両親が、世界からの情報をいち早くキャッチできるようにと付けたということです。これから待ち受けているであろう、試練の数々を、故郷に吹く風を思い出し、進取の気性で、きっと乗り切ってくれることでしょう。

(大槌町総合政策課・但木汎)


連載【岩手・大槌町から】
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