次々と新事実が明らかになる「食材誤表示」の問題。高級食材をうたいながら実際はそれよりも安価なもの、手間のかからないものを提供していたわけだが、発覚したホテルや百貨店の多くは「誤表示」として偽装を否定する。
2013年11月5日に発覚した高島屋の「誤表示」には、フランスの有名ブランド「フォション」や「ジョエル・ロブション」も含まれていた。各店の苦しい説明に、消費者からは冷ややかな視線が注がれている。
ブラックタイガー、肝心な商品名は「変更し忘れた」
「認識に非常に甘い部分があって、当社も十分に管理できていなかった」
高島屋は11月5日に会見を開き、日本橋をはじめとする百貨店5店舗とショッピングセンター1施設で計62点の「誤表示」があったとして謝罪した。発表内容には、「車エビ」と表示しているエビに「ブラックタイガー」、「ステーキ」と表示している肉に「牛脂注入した加工肉」を使用するなど、これまでの報道でおなじみになっている事例が並ぶ。増山裕常務は「認識の甘さ」を強調し、偽装については否定した。
問題が発覚した店舗には、食通御用達というイメージが定着しているフランスの有名ブランド「フォション」や「ジョエル・ロブション」の名前もあがった。フォションの総菜はフォション本部の承認のもと、高島屋のグループ会社が企画・製造しているものだ。今回問題となった「車海老のテリーヌ」は企画段階から車エビではなくブラックタイガーの使用が決まっていたが、商品名をあろうことか「変更し忘れたまま」販売していたという。
「偽装、誤表示とは考えておりません」
フレンチの巨匠、ジョエル・ロブション氏の名を冠したカフェで提供されていたのは、「フレッシュジュース」ではなく100%のフルーツジュースだった。同店を運営するフォーシーズに取材したところ、広報担当者から「百貨店からは『誤表示』と発表がありましたが、当社としては偽装、誤表示とは考えておりません」と予想外の回答が返ってきた。
同店ではもともと「手しぼりジュース」を提供していたが、今年6月には100%ストレートジュースの「フレッシュジュース」に切り替えた。商品名の「フレッシュ」は「新鮮でおいしい」という意味で使っていたといい、「フレッシュジュースの注文があった際には、お客様から質問がなくても、紙パック容器の100%ストレートジュースだということをお伝えしてきました」(広報担当者)という。
フレッシュジュースについて、景品表示法に基づく公正競争規約では「客観的根拠に基づかない『フレッシュ』などの表示は不当表示に該当する」としている。帝国ホテルやザ・リッツ・カールトン大阪でも同様の問題が指摘されていたが、同社が東京都生活文化局に表示について確認したところ「抵触する部分はない」という見解だったいい、偽装、誤表示の疑惑を突っぱねる。現時点ではこの件に関する発表の予定はないという。
「誤表示」、なぜ表示より良い食材と間違えないの?
高島屋やロブションに限らず、問題が発覚したホテル・百貨店の多くは「偽装の認識はない」と口をそろえる。不正競争防止法や景品表示法に抵触する可能性を考えての判断だという見方もあるが、だからといって消費者は納得しない。
言い訳にしか聞こえない釈明に、インターネット上には「全てうっかりなのだったら、メニューにカニカマって書いてるのに松葉ガニ使っちゃってるケースが無いのは随分都合のいいうっかりだな」、「ブランドビジネスの要諦知らないんでしょうか。『安物を高く売りつけるためにブランドがある』と考えているとしか思えない」といった怒りの声、呆れ声が渦巻く。中には「もういいよ。世の中9割は偽装と思っていた方が無難」と極論に達する人もいる。
「ブランド」と「信用」の関係を揺るがす大きな問題に発展したが、現在「偽装」と認めているのは、近畿日本鉄道系の旅館、奈良万葉若草の宿三笠や阪急阪神ホテルズなど一部に限られている。