「これ以上お客さまから不信感を頂戴することはないようにしなくては……」――「おせち商戦」への影響を尋ねると、大丸松坂屋の広報担当者は声を曇らせた。
「おせち」の市場規模はおよそ500億円ともいわれる。年末を目前に巻き起こった「誤表示(不正表示、虚偽表示)」問題に、百貨店業界は大揺れだ。
高島屋、大丸松坂屋など老舗も…
2013年10月22日、阪急阪神ホテルズのレストランでの発覚したのを皮切りに、食品の「誤表示」問題が全国で明るみに出ている。安価なバナメイエビを「芝エビ」、普通のネギを「九条ネギ」、容器詰めジュースを「フレッシュジュース」――一般の消費者には違いはほとんどわからないというが、高級食品として食べていたものが「安物」だった、ということになるだけに、世間の怒りは大きい。
ホテル、レストランで火が付いたこの騒動は、やはり「高級」を売りにする百貨店業界にも燃え移った。特に高島屋では、6店で提供していたメニュー、惣菜で「表示と異なった食材」が使われていたことが発覚、5日に経営陣が謝罪会見を開くこととなった。その期間は最長9年、販売数は18万点にも達する。
百貨店業界の年末の「看板」である、おせち商品でも、やはりというべきか「誤表示」が出てきた。仏有名ブランド「フォション」名義で販売されていたおせちの中の「車エビのテリーヌ」に、車エビではなく「ブラックタイガー」が使われていたのだ。しかもこの「フォションおせち」、上記の高島屋をはじめ、大丸松坂屋、小田急、京王、東武など、全国各地の百貨店に納入されていたことがわかっている。
たとえば小田急百貨店では、2012年に25点を販売しており、13年も予約を受け付けていた。現在、予約者には謝罪とともにキャンセルか別の商品への差し替えを打診、また昨年の購入者には3000円分の商品券を贈るなどしているという。他の百貨店でもおおむね同様で、新規予約の差し止めや一部返金などに応じているところが多い。