搭乗率が低迷した「エアアジア・ジャパン」を衣替えする形で再出発する格安航空会社(LCC)のバニラエアが、チケット販売開始直後から利用者の批判を浴びている。
エアアジア時代に「使いにくい」と評判だったウェブサイトの改善を宣言していたにもかかわらず、発売初日にダウン。現時点では台湾から購入出来ないことを告知していなかったため、台湾の利用者は購入可能だと誤解した。このため、「差別だ」といった声も相次いだ。
1000円のキャンペーン運賃で注目集めたのが災い?
バニラエアは12月20日、成田空港を拠点に沖縄(那覇)、台北(桃園)を結ぶ2路線でスタートする。14年1月29日に札幌(新千歳)、3月1日にソウル(仁川)便も開設予定だ。
11月1日に4路線の予約が始まったが、片道1000円のキャンペーン運賃で注目を集めたのが災いしたのか、サイトオープン直後からアクセスが殺到。またたく間につながらなくなった。
エアアジア・ジャパンの低迷は、「マレーシア仕様」とも言えるウェブサイトの使いにくさが一因で、石井知祥社長が10月26日に報道陣の前で
「大幅に改善する。ウェブが苦手な人でも(予約が)取りやすい」
と宣言したばかり。それだけに、利用者からの批判が相次いだ。
サイトは11月1日正午にオープン。この時点で予約対象の便が検索できなくなっていたが、キャンペーン運賃の販売が始まった15時には、トップページの表示すらできなくなった。ウェブサーバーのメモリを1.5倍、回線を3倍、台数を2倍に増強するなどした結果、23時45分には予約ができるようになった。
これらの対策のひとつが、台湾の利用者の怒りを買った。台湾からのアクセスを一時的に制限したためだ。台湾でのチケット販売が始まっていない上、「台湾からのアクセスが日本を大きく上回る不自然な状況」だったことがその理由だが、日本でしか販売されていないことが「差別」だとの声が続出し、フェイスブックのコメント欄が炎上した。
バニラエアはウェブサイトやフェイスブックで
「弊社における台湾発・韓国発航空券販売は、政府・関係機関の許可・承認が必要となっております。台湾・韓国における販売開始時期については、改めてご案内させて頂きます」
と説明したが、これが結果的に火に油を注ぐことになった。
台湾から買えないことが明らかになる
台湾大手衛星放送局の「TVBS」は11月2日、
「ずっと(再読み込みをする)F5ボタンを押し続けて、手がつりそうになった」
といった利用者の不満の声を伝え、
「(日本の国土交通省航空局にあたる)民航局は、11月2日時点で申請は行われていないとしている」
とも指摘した。言わば「申請もしていないのに、台湾で売っていないのを行政当局のせいにするのはおかしい」という訳だ。
日本発着の往復チケットと日本発の片道チケットは、日本政府の認可があれば販売できる。だが、海外発着の往復チケットと海外発の片道チケットは、現地当局の認可が必要だ。ところが、バニラエアの説明によると、台湾では飛行機を少なくとも1機は所有していないと申請することすらできない。同社はエアアジア時代の航空機はすべて返却し、バニラエアとしての飛行機を受け取るのは11月中旬。現時点では1機も飛行機を持っていない。申請をしていないのは事実だが、「したくでもできない」というのが実情のようだ。
また、11月1日になって初めて台湾から買えないことが明らかになったことについては、同日の発売は「日本国内向けの発表」で、「台湾および韓国では発売開始日が確定した後に、発売をお知らせする場を設けさせていただく予定でした」と釈明している。
「台湾のお客様は非常に大切に思っております」とも話しており、飛行機を受け取った後に当局に申請し、12月上旬には発売したい考えだ。