長野県建設業厚生年金基金で約24億円もの使途不明金が出ていた問題で、横領の疑いで国際手配されていた男が潜伏先のタイ・バンコクで逮捕された。
タイ人女性に数百万円を貢いでいたとの話がある一方、本人は家賃8000円のアパート暮らしで、所持金もほとんどなかった。どんな人物なのだろうか。
愛人に月10万円渡すも「毎日女性を替えていた」
これまでの報道を総合すると、男は2010年にタイに入国し、以後逃亡生活を送っていたが不法滞在の容疑で逮捕された。長野県建設業厚生年金基金に20年以上勤務し、2003年から事務長として資金管理を任されていたという。ところが同基金では約24億円の使途不明金が発覚、また2012年には、ずさんな運用実態が問題となったAIJ投資顧問に約65億円を委託していたことが分かった。さらにこれとは別に、ファンド会社を通じて未公開株に68億円を投資したが2012年までに20億円ほどにまで目減りしていたことも明らかになった。
ひとりの担当者に長年、大金の取り扱いを任せ切っていた基金の管理体制も問われるだろうが、この男は巨額のカネをどう使ったのか。現時点では、タイ人女性へ貢いだという説が有力となっている。
もともと「浪費癖」があったようだ。2013年11月5日放送の「朝ズバッ!」(TBS系)では、基金に勤務していたころから「タクシーで出勤していた」「上京するたびに銀座や六本木で豪遊し、『社長』と呼ばれていた」「ロールスロイスを乗り回していた」という証言を紹介した。さらに当時から、休日ともなれば頻繁にバンコクを往復していたという。2010年以降の逃亡生活では、すっかりタイ人女性に入れあげた。「650万円もらった」「150万円とブランド品をくれた」といった女性たちの話や、「キス写真」まで出てきた。
フジテレビはニュースで、男と愛人関係にあったタイ人女性の証言を取り上げた。多い時は月に10万円をもらっていたという。だが男は複数の女性と交際していて、「毎日女性を替えていた、風俗店に行くのが好きだった」と暴露した。
そのうちお金が底をつき、逮捕直前に住んでいたのは日本人をほとんど見かけないバンコク中心部から離れた安アパートで、家賃は8000円だという。それすらも滞納を繰り返し、逆に愛人に無心する始末。最後は「金の切れ目が縁の切れ目」とばかりに、愛人に通報されて「ご用」となった。
妻が日本にいながらタイ人女性と同棲
「こういう事件は、あってもおかしくないですね」
J-CASTニュースの取材にこう答えたのは、仕事で2007年まで7年間タイに滞在していた日本人男性だ。この人物の周辺にも、タイ人女性に「貢ぐ」日本人男性の姿があったと打ち明ける。
例えば勤務していた会社の上司は、タイ人女性に車を購入したところ、すぐに逃げられてしまったという。別の上司は、日本に妻を残していながらタイ人女性と同棲するありさまで、「マンションを買ってやったうえ、会社が開くイベントにまで連れてきていました」。また同僚の40代男性は、親の年金でバンコクにマンションを構え、タイ人女性を一緒に住まわせていたそうだ。
そろいもそろってここまでメロメロになる魅力はどこにあるのか。取材に答えた男性は「結局は見かけのよさと、一見すると奥ゆかしいところがあるタイ人女性にひかれるのではないでしょうか」と推測したうえで、「40代後半の日本人男性が20代の美しい女性と交際できるなんて、日本ではありえませんからね」と突き放す。今回逮捕された男の年齢は55歳。ニュース映像を見る限り、年齢相応のルックスで若い女性にもてそうには見えない。結局は「カネ次第」なのだろう。
「寂しがり屋で、女性から頼られると断れないタイプ」がタイで女性にはまるパターンではないかと、先の男性は話す。年金基金で長年コツコツと働いてきた中年男が、旅先のタイで女性にちやほやされて勘違いし、もっと気を引こうと立場を利用して巨額のカネに手を付けた――。こんな背景があったのだろうか。
今回の件で思い出されるのは2001年、青森県住宅供給公社に勤務していた40代男性が、約14億円を横領して逮捕された事件だ。その大部分が妻のチリ人女性に渡ったとみられ、妻はその金で母国に豪邸を建てたうえしばしば日本のメディアに登場し、「自分は知らなかった」と繰り返した。その後豪邸は競売にかけられたが、最終的に回収されたのは5000万円程度とされる。仮に今回のケースで、男が24億円すべてを着服したとしても、本人に支払い能力がないと結局全額は回収できない恐れが大きくなりそうだ。