一作家による小説としては「世界最長」とされる「グイン・サーガ」(栗本薫著、早川書房)本編が、2人の後輩作家によって引き継がれる。著者の栗本薫さんが2009年に亡くなり、未完のままになっていた。「続きが読みたかった」とファンも多かったという。
続編が出ることが報じられるとネットでは、「グイン・サーガの続編が出る!! よかった!うれしい!たのしみ!」といったツイートが出た。
「失われた時を求めて」より長い
豹の頭を持つ戦士・グインが主人公のファンタジー小説だ。中世ヨーロッパに似た架空の世界が舞台で、パロ、ケイロニア、ゴーラという3国が争う。1000人以上の人物が登場し、さまざまな人間模様が描かれる壮大な物語となっている。
「世界最長」の小説といわれ、マルセル・プルーストの「失われた時を求めて」(フランス語で約960万9000文字)よりも長い。2004年11月の読売新聞記事によると、「グイン・サーガ」の英語版を元に算出して3022万5000文字で(2004年当事)、早川書房がギネスブックに「世界最長」小説として申請したが、「この記録は一冊の本でなければ認められない」と受け入れられなかった。
1979年に第1巻「豹頭の仮面」が刊行され、2005年には第100巻となる『豹頭王の試練』が出た。当初は全100巻で完結する予定だったが、その後も物語は続き、栗本さんのライフワークとなった。しかし、著者の栗本さんが2009年5月、すい臓がんのため56歳で亡くなり、執筆を終えていた129巻と、130巻の途中までは刊行された。累計発行部数は3300万部を記録している。
生前に栗本さんは、
「自分がもしかなり早く死んでしまうようなことがあっても、誰かがこの物語を語り継いでくれればよい。どこかの遠い国の神話伝説のように」
と著書のあとがきに記していた。
今回の続編刊行はその遺志を継いだものだ。2013年11月8日に五代ゆうさんが131巻として「パロの暗黒」を、12月には宵野ゆめさんが132巻「サイロンの挽歌」を刊行する。
「この巻から入ってもいちおう前後はわかる」
五代さんは、第4回ファンタジア長編小説大賞(富士見書房主催)で大賞を受賞し、「パラケルススの娘」「柚木春臣の推理 瞑る花嫁」などの著作がある。宵野さんは栗本さんの小説講座で弟子として学んでいた。
「グイン・サーガ」はかなりの長編のため、途中の巻で読むのが止まっている読者も少なくないが、五代さんは
「この巻から入ってもいちおう前後はわかるように気をつけて書きましたので、しばらく読んでなかったわーという方もグインって?という方もどうぞお気軽にですヽ(*´∀`)ノ」
とツイートしており、131巻から読み始めても問題ないようだ。
ネットでは、別の著者が続編を書くことに不安を感じるという意見もある一方で、
「『こんなのボクのグイン・サーガじゃないやいっ』ってのは、もう栗本薫さん本人が書いていた時でもあったわけだから、今さらもいいところだし。どんどんいろんな『グイン・サーガ』が現れていけばいいんだと思うよ。それでこそサーガってものだ」
と期待する意見が多く書き込まれている。