大学の「卒業認定」の厳格化を目指し、政府の教育再生実行会議が現行の補助金制度を見直すよう促す方針を2013年10月29日に固めたと複数メディアが報じた。
学生数が定員を大幅に超えると国からの補助金が交付されないため、大学は成績の悪い学生でも留年させにくい状況にあった。同会議はこれを問題視し、現行のルールを撤廃、または緩和を提言するという。インターネット上では歓迎の声を含め、さまざまな意見が出ている。
出口管理を強化し、卒業生の質アップ
国の補助金は大学にとって重要な資金源になっている。文部科学省は私立大学に経常費補助金として約3200億円、国立大学には運営費交付金として約1兆1千億円(ともに2012年度)を投じている。しかし補助金の満額交付は定員超過、定員割れをしていないことが条件だ。一定の超過率を超えた場合、私立大では減額、または不交付となり、国立大では超過人数分の授業収入相当額を国に返納する仕組みになっている。
補助金が減らされるとあれば、大学は安易に学生を留年させにくい。しかし本来留年すべき学生を卒業させてしまえば、卒業生の質の低下にもつながる。各報道によると、同会議ではこうした現状を問題視し、定員超過の場合でも助成を減らさない必要があるとした。10月末にまとめる提言に現行制度の見直しを盛り込むという。「入りにくく、出やすい」といわれる日本の大学で、大学生の学習量を増やし、卒業生の質向上を狙う考えだ。
金銭面、就活面など問題点指摘する声も
卒業認定のハードル引き上げには歓迎の声が多い。インターネット上にも「そもそも『成績の悪い学生を留年させて大学が不利になる』ということ自体が不可思議な制度設計」「出口を絞れば学生も勉強して有意義な4年間になる」といった声が出ている。しかし単純に、留年させやすい環境を作ればいいという話でもない。いくつかの問題も指摘されている。
まずは「人物重視入試」との一貫性だ。今月上旬には、同会議が国公立大学入試の2次試験において、ペーパー型入試試験の廃止を検討しているという報道があった。「知識偏重」から転換した入試で入学した学生に学力を求めた場合、留年生で溢れてしまうのでは、と危惧する声が出ている。金銭面の負担を懸念する声も少なくない。留年の場合、学費が減額になる大学もあるが生活費などを含めればかなりの額になる。専修大学の准教授は1年で100万円近くかかると指摘し、「楽しいってだけで払える金額じゃない」とツイートしている。
多くの人が問題視していたのが、就職との兼ね合いだ。内定率は数年前の氷河期から徐々に回復してきたものの、依然、就活戦線は厳しい。少なからず年齢差別も存在する。ネット上では「大学にとっては良い話だけど、社会にとっても良い話にするには就職時の年齢差別に手を付ける必要あり。そうでなければドロップアウトする機会がもう一度増えるだけ」という声もあった。また「大学を卒業させないというのは、内定取り消しとほとんど同義だから、その決定を下す教員の心理的負担は大きい」との指摘もある。頑張って内定を得られてとしても留年してしまえば水の泡だ。そのため、「就活のあり方が変わらないと、恩情単位認定は続くのでは」という意見も出ていた。