秋の園遊会で天皇陛下に直接手紙を渡した山本太郎参議院議員の行動に、与野党から批判が相次いでいる。インターネット上でも問題視する声が多く、Yahoo!ニュースの意識調査では「支持しない」が8割を超えた。
しかし一方で、ジャーナリストの田中龍作さんが「今までマスコミや政府がちゃんと扱わなかったから、起こるべくして起こった『事件』なのだ」と語るなど、識者の一部からは賛同意見が寄せられている。
「どのようなレッテル貼られても結構」と開き直り?
2013年10月31日、山本議員は前日に筆でしたためたという手紙を天皇陛下に手渡した。「子供などの被爆問題」「収束作業に携わる人たちの労働環境」など福島原発事故後の「現状」を伝えたものだという。陛下は手紙を受け取られたものの、お手元にあったのは十数秒の間で、すぐそばに控えていた川島裕侍従長が預かった。「お手紙」という名目であっても、天皇陛下への直訴は戦前ならば不敬罪などの罪に問われる「禁じ手」だった。今日でも「天皇の政治利用」として問題視される。
山本議員は同日夕方に記者会見を開いた。陛下に手紙を渡すことは「失礼にあたるかもしれない」とも考えたが、園遊会で手紙を渡してはいけないというルールは聞いていないとして、「現状を知っていただきたいという自分の気持ちが勝ってしまった」と釈明する。政治利用、政治パフォーマンスなのでは、と質問が飛ぶと、「どうして政治利用になるんですか?どのような利点があるというんですか?」と反論。あくまで、ひとりの人間として伝えたいことがあったのだという。批判も承知の上だったようで、最後には「どのようにレッテルを貼っていただいても結構です」と話し、その場を後にした。
皇室ジャーナリスト「やってはならないこと」と呆れ返る
前代未聞の出来事に与野党からは多くの批判が出ている。下村博文文部科学相は11月1日の閣議会見で「これを認めれば色々な行事で天皇陛下に手紙を渡すことを認められるようになる」とし、山本議員の行動を「議員辞職もの」と糾弾した。インターネット上でも「常軌を逸している」と大バッシングだ。Yahoo!ニュースが行っている「天皇陛下に手紙を渡した山本議員の行動をどう思う?」という意識調査には37万7000近い票が集まっているが、「支持する」が11.2%に対し、「支持しない」は83.1%と大きな差がでている(1日17時時点)。
1日の「ワイドスクランブル」(テレビ朝日系)に出演した皇室ジャーナリストの神田秀一氏は「勉強不足もはなはだしい。経験もない、理解もないと。一般の人ならいざ知らず、国会議員がその程度のものかというまさに恥ずかしい行為」「異例なんてものじゃない。やってはならないこと」と切り捨てた。
「みんなで天皇陛下に手紙を書こう!」との呼びかけ
しかし賛同する声もある。インターネット上には一部から「そうだ、みんなで天皇陛下に手紙を書こう!」との呼びかけまで出始めた。ジャーナリストの中にも称賛コメントを寄せる人たちがいる。
田中龍作氏は自身のサイトに「没後百年を経て蘇る田中正造の精神」と題した記事を公開した。足尾鉱毒事件の解決に奔走し、明治天皇に直訴状を出した田中正造になぞらえ、山本議員の行動を評している。マスコミや政府に対し「田中正造と山本議員の行動に共通する『やむにやまれずした熱い思い』をわかっているのだろうか」と疑問を投げかけ、「今までマスコミや政府がちゃんと扱わなかったから、起こるべくして起こった『事件』なのだ」と綴った。
田中稔氏もツイッターで「宮内庁の作法に基づかなかったが、悪意は全くない。責めないでほしい」「違法性や規範抵触がなく、子供や労働者を被曝から救いたいというヒューマニズムに基づくもの。参院議運委には寛大なる措置を望む」と山本議員を擁護する。浅井久仁臣氏は「あの行為には賛成しかねますが、山本氏をサポートする姿勢は揺るぎません」とツイートし、今後も支持する意向を表明した。
ジャーナリスト以外でも経営コンサルタントの宋文洲氏が「一人間としての天皇に手紙を渡すことは素敵なことだ。これまでやる人がいないからと言って嫉妬しちゃだめだよ」「手紙を受けて下さったのだから、文句を言う奴らが失礼だよ」などと連続ツイートし、山本議員の行動に理解を示している。