全国のホテルで相次いで発覚している「メニュー偽装」。国内外の要人が宿泊する帝国ホテルでも2006年5月まで、「フレッシュジュース」と表記しながら非加熱加工のストレートジュースを提供していたことがわかった。
フレッシュジュースの「偽装」は、阪急阪神ホテルズ系列のホテルやザ・リッツ・カールトン大阪、プリンスホテルなどでも発覚。どこも「生搾り」ではなかった。いったい、なぜなのか――。
2006年5月以降は「生搾り」のフレッシュジュースを提供
帝国ホテルのコーヒーハウスでは2006年5月まで、非加熱加工のストレートジュースを900円で提供していた。
ホテルによると、ジュースは米国内で搾って加熱せずに瞬間冷凍したもので、輸入業者から購入し、ホテルで解凍していた。「いつから提供していたかはわからないのですが、当時、加熱したものは『フレッシュジュース』ではないとの認識があり、非加熱加工のストレートジュースを輸入。もちろん、製品はきちんと試飲して手搾りと同等の品質があると判断して提供していました」と説明する。
JAS法に基づく果実飲料品質表示基準では、メーカーや卸業者を対象に、加工したジュースには「フレッシュ」の文言を使用してはいけないと定めている。帝国ホテルには、その認識はあったようだ。
その後、帝国ホテルはメーカー側が非加熱加工したジュースの製造打ち切りに伴い、輸入業者から加熱加工したジュースへの変更を提案されたことを契機に、「フレッシュジュース」として提供するのは不適当と判断。2006年5月以降はホテルで生の果実を搾った「フレッシュ オレンジジュース」と「フレッシュ グレープフルーツジュース」を、1200円から提供している。
ホテルは「偽装の意図も、それで儲けようと思ったこともまったくありません」と話し、価格も「当時は輸入コストなどを、06年5月以降も生搾りのジュースを提供するコストを勘案して設定しています」という。
「フレッシュジュース」は、注文を受けてから、2個程度のオレンジやグレープフルーツを、マシンを使って搾ってつくり、提供している。
手間かかるし、コスト削減、「濃縮のほうがおいしい」
とはいえ、「フレッシュジュース」から受ける印象は、「とれたて」とはいわないまでも、果実をその場で搾った、文字どおり「新鮮さ」だろう。
ザ・リッツ・カールトン大阪では「フレッシュジュース」を、ストレートジュースが冷凍された状態でホテルに届けられ、自然解凍した後にパックからグラスに注いでいた。
ストレートジュースを使用したことについて、ホテル側は「品質を一定に保つ必要があり、またゴミを削減するため」と説明。要は、1杯のジュースに使われる果実の費用と、果実を搾るコックなどの人件費や大量の搾りかすを処理する費用がかさむため、手間とコストを削減したかったということらしい。
しかし、そういったジュースの原価を勘案して価格を設定しているのではないのか――。
また、変更にあたり、「搾ったものと濃縮還元のジュースをスタッフで飲み比べたところ、全員が濃縮のほうがおいしいと答えた」とも話しているが、それであればきちんと「濃縮還元ジュース」と表記して、価格を見直して提供すればいいはずだ。
「コスト削減で儲けたい」といった気持ちが「偽装」に走らせた、と思われても仕方ないかもしれない。