天安門に車で突入したのはウイグル族か 中国メディアは「犯人像」伝えず

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貧困層が犯人だとしたら少数民族より都合悪い

   新疆ウイグル自治区では2013年に入って2度、大きな暴動が起きている。4月、カシュガル郊外で警官ら15人が殺害された。6月にはトルファンで、暴徒が警察署や地方政府の建物を襲撃し35人が死亡した。当局は容疑者を公表していないが、いずれもウイグル族によるものとみられる。騒乱直後、区都ウルムチは武装警官によるものものしい警備体制がとられた。背景には宗教問題や、漢族優遇を進める政府に対する不満があると見られている。

   漢族の「対ウイグル感情」も決して良くないと安田氏は話す。実態はともかく、庶民の認識としては反社会的な行為をはたらく危険な存在との偏見があるようだ。政府としては、いたずらに双方をあおって本格的な衝突につながればコントロール不能となり、大きな社会不安を招くことになるだけに、今回のような問題には敏感にならざるを得ない。

   もしウイグル族の過激派組織による意図的な「犯行」だとしたら、「彼らは『内外の注目を集めた』と実感したかもしれません。それだけ、中国の現体制の象徴である北京の天安門広場で起きたことは特別な意味を持ちます」と安田氏。当然当局側は今後、警備を強化して同様の騒動を起こさないようにするだろう。

   ただ中国社会で不満を抱えているのは少数民族だけではない。貧困層を中心に格差拡大に反対する人たちもいる。こうした、言わば「一般市民」が中央政府に反発し、反体制運動のうねりが起こりでもしたら政府にとってまさに悪夢だろう。今回の車両突入を起こしたのが仮に貧困層の庶民だったとすれば、社会の多数派から怒りの矛先を向けられたということで、少数民族の過激派グループが犯人であるよりもずっと都合が悪い。

「皮肉な見方ですが、ウイグル族が『犯人』であってくれたほうが、現体制としてはありがたいかもしれませんね」

   安田氏はそう指摘する。

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