天安門に車で突入したのはウイグル族か 中国メディアは「犯人像」伝えず

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   中国・北京の天安門前に車両が突入し炎上、死傷者が出た。当局は事件性があると認めて捜査を続けている。

   現場周辺は1989年、学生らによる民主化運動の舞台となり多数の犠牲者を出した。当局にとって、神経をとがらせる場所だ。中国の主要メディアは事実のみを短く伝え、容疑者や背景については報じていない。

テレビの放送は1分半、犯人に関する言及なし

事故翌日の天安門の様子を伝えるCCTV
事故翌日の天安門の様子を伝えるCCTV

   国内外の報道を総合すると2013年10月28日、白の四輪駆動車が天安門前を通る「長安街」から車両通行禁止の歩道に侵入、通行人をはねながら突き進んだ末に天安門近くの橋の欄干に激突、炎上した。これまでに5人が死亡、日本人を含む38人が負傷した。中国版ツイッター「微博」には、発生直後に車が燃え上がる写真が投稿されるなど書き込みが相次いだが、その後削除された。

   中国共産党機関紙「人民日報」や中国国営の「新華社」は、事実を短く報じた。翌10月29日、オンラインで生放送されている中国中央テレビ(CCTV)の正午のニュース(英語版)では、番組開始から30分経過してようやく伝えられたが、時間はわずか1分30秒。事故に関するこれまでの報道内容をなぞる一方で、新たな情報は「北京市当局の関係者が被害者の搬送先の病院を訪れた」、「天安門は観光客が入れるようになったが警備が厳しい」といった程度だ。容疑者に関する言及はない。世界のメディアが関心を寄せているのとは対照的に、形だけで終わらせたような印象だ。

   だが中国以外のメディアは既に犯人を特定し始め、新疆ウイグル自治区出身の少数民族ではないかと報じた。北京市の治安当局では29日、容疑者としてウイグル族とみられる2人の男性の実名を記した通知を市内の宿泊施設に配布、そのコピーが「微博」などを通じてインターネット上に出回った。

   容疑者に関する報道を巡って、中国内外のメディアでこれほど温度差があるのはなぜか。中国事情に詳しいノンフィクション作家の安田峰俊氏に聞くと、「中国では、当局にとって得になると考えれば容疑者について詳しく報じますが、そうでなければ控えます。要はケースバイケース」と説明する。

   仮に犯行の首謀者がウイグル族の場合、容疑者に関する積極的な情報開示は政府にとって不利益と判断しての消極的な報道姿勢かもしれないが、ではその理由は何だろうか。

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