税理士業界と公認会計士業界が火花を散らしている。現行の税理士法では、弁護士や公認会計士の資格を持っていれば自動的に税理士資格が付与されるが、税理士業界が、この規定をなくして新たに税法や会計の試験科目合格を課すように求めているからだ。
当然、公認会計士業界は反発。日経新聞の意見広告で互いを批判し合う事態になっている。
税理士側は14年通常国会で法改正目指す
税理士の業界団体にあたる日本税理士会連合会(日税連)は、2010年頃から税理士法の改正を求める動きを本格化させており、13年9月20日、池田隼啓会長が首相官邸を訪れて、資格の自動付与廃止を骨子とした「税理士法に関する改正要望書」を手渡すなど、ロビー活動も活発だ。14年の通常国会で法改正に持ちこみたい考えだ。
波紋を広げたのが、その1週間後の9月28日の日経新聞朝刊に、1ページにわたって掲載された意見広告だ。
「日本の未来のために税理士法改正を!」
という大見出しの下に、
「公認会計士または弁護士に税理士の資格を付与するにあたっては、税法または会計科目に合格する等の一定の能力担保措置を講ずるべき」
「本来、各々の士業がその使命や業務に専念できるよう、制度問題として法改正を行わなければなりません」
といった主張をまとめたものだ。
会計士側は法改正が「『納税者の利益』を著しく損なう」と主張
この意見広告に対して、公認会計士の業界団体にあたる日本公認会計士協会は
「主張・論拠には合理性がなく、国民・納税者に誤った認識を与え、加えて誠意を持って議論をしようとする信頼関係を損ねる」
として日税連に抗議。10月25日には日経新聞に意見広告を出し、
「公認会計士を税務業務の担い手から排除することは、納税者の選択の幅を狭め、『納税者の利益』を著しく損なう」
「監査・会計・税務は一体不可分であり、公認会計士はそれらすべての専門家であることが『国際標準』です」
と、名指しこそ避けたものの日税連の主張に反論している。
日税連が不足を指摘している税務能力についても、公認会計士試験の段階で「税法」科目に合格する必要がある上、資格取得後も研修が義務づけられていることを理由に問題ないとの立場も強調。さらに、
「公認会計士が税理士登録を行わずに税務業務ができるよう、必要な法改正を求めます」
と、逆に税理士業界へのハードルを下げるように求めた。
リーマンショック直後の09年頃から本格化した公認会計士の「就職難」が、この騒動の背景にあるとの見方も出ている。就職先を見つけられなかった会計士が税理士に流れ、税理士からすれば「畑を荒らされる」という懸念だ。だが、07年に4041人いた公認会計士の合格者は12年には1347人に激減。景気回復にともなって監査法人も採用数を増やしており、人材の奪い合いも起こっている。税理士側の心配は杞憂に終わる可能性が高い。
また、日税連の主張については、日本弁護士連合会(日弁連)も強く反対する声明を出している。