愛犬と散歩している飼い主を見て「そっくり!」と思ったことがある人は少なくないはずだ。
実際に「犬と飼い主は顔が似ている」という研究報告は複数あるが、関西学院大学の教授が、似ているという判断には「目」が重要であるという結果を発表した。
飼い主と犬の写真、正しいペアとペア入れ替えで調査
実験は、関西学院大学の中島定彦教授(動物心理学)が英国の学術誌「アンスロズーズ」12月号に発表したもので、2013年10月25日、電子版に掲載された。中島教授は09年に「犬と飼い主は顔が似ている」という論文を発表しており、今回は顔のどの部分が似ているのかに焦点をあてている。
中島教授は40頭の犬(純血種)とその飼い主のカラー写真を用意し、正しいペア20組とペアを入れ替えた20組に分け、事情を知らない学生ら計547人にどちらが似ているかを5つの条件で尋ねた(実験は全5回)。
その結果、そのままの写真では67~80%の判定者が正しい組を選択し、犬と飼い主の「目だけ」を見せた写真でも69~76%の人が正しい組を選んだ。犬と飼い主、どちらか一方の目を黒線で隠した写真では、ともに正答率は50%前後となり、たまたま選んだ場合の偶然水準を超えなかった。また、飼い主の口を隠した写真では、ほとんど結果に影響が出なかった。以上から「犬と飼い主が似ている」と判断するには目(目および目の周辺)が重要であることが分かる、と結論付けた。
なぜ似ているかは謎のまま 徐々に似る可能性は低い
もちろん、すべての場合に似ているということではなく、あくまで「総じて似ている」に留まる。だが、今回の研究で似ている部位が「目」だと分かったこと、体型などの全体的な雰囲気や先入観が影響する可能性が排除できたことは新たな知見となったようだ。
研究結果はインターネット上でも話題になり、「言えるような気がする。どんぐり目だもんな、お互いに(笑)」「うちのも一番可愛がってたオヤジにそっくりだったw」「実感有りです。よく言われました。まぁ、本来の飼い主は父なので、父≒私≒犬なのでしょうね」といった飼い主たちからの声も挙がっていた。
しかし一番気になる「どうして犬と飼い犬が似ているのか」については明確な答えが得られておらず、まだ研究が必要のようだ。中島教授やアメリカの研究者が行った実験では、飼育年数との相関関係が認められないことから「飼っているうちに似てくる」という可能性は低いとしている。それより、人は見慣れたものに好感を抱くため、無意識のうちに自分によく似た犬を飼い犬として選択しているとの見方が強い。これは犬に限らず、カップルや夫婦が似ている理由としても指摘されている。
今後の課題は「目」のどのような特徴が「似ている」という判断に影響するかを明らかにすること。「例えば、経験ではなく遺伝によって規定される特徴(目の色など)が似ているのであれば、飼っているうちに似てくるのではなく、飼い主が自分に似た顔の犬を選んでいるといえる」(中島教授の発表コメントより)。これが分かれば「なぜ犬と飼い主が似ているのか」の問いの手がかりになるだろうと期待をかける。