社会保障「高負担」時代がすぐそこに迫ってきた 政府「プログラム法案」で値上げスケジュール確定へ

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与党内にも「消費増税と同じタイミングはまずい」

   このうち、第1関門が医療分野だ。70~74歳の医療費の自己負担は、法律上は2割だが、特例措置で毎年約2000億円の予算を組み、1割に軽減してきた。現在1割負担の人を2割に上げるのには反発が強いとして、2014年度から、新たに70歳になった人に限り2割負担にする方向。「部分実施」のため、浮く税金は2014年度は最大200億円にとどまる見込みだが、それでも、消費税率が8%に上がるのと同じタイミングだけに、与党内に「半年は遅らせるべきだ」との延期論がくすぶる。

   介護では、1割負担と2割負担の線引きをする所得額が大きなテーマ。厚労省はいまのところ、夫婦で年収360万円程度のラインを考えているが、高齢者の負担増につながるだけに、これも与党側からは慎重論が絶えない。

   これらのテーマで、仮に与党を説得できたても、消費税増税を踏まえた社会保障制度改革と政府の財政健全化政策の全体像は、なお曖昧なままだ。消費税率を10%に引き上げたときには、うち税率1%分の2.7兆円を社会保障の充実策に振り向けるとともに1兆円超の効率化も必要というのが政府の考え方。「税収を当てにして社会保障改革に手をつけないなら制度がもたなくなる」(財務省幹部)ということだ。

   しかし、プログラム法案に明記した政策だけでは1兆円には遠く及ばない。このため、例えば医療機関の患者の平均在院日数の削減などが必要とされるほか、今回先送りされた"本丸"の年金改革を含め、社会保障改革で第2、第3の矢を実行しなければ「持続可能な制度」の実現はおぼつかない。

   シンクタンクからは「個々の改革の成果を積み上げた場合の財政への影響や、社会保障給付を最大限抑制したとしても追加の国民負担増が発生するならばその規模など、早期に議論を開始すべきである」(大和総研)との指摘が出ている。

   自民党は参院選で社会保障改革に伴う負担増が争点化するのを巧みに避けたが、これからは逃げてはいられない局面に差しかかる。高齢者に負担をどこまで求めるか、安倍政権の実行力が問われることになる。

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