貯蓄のはずだった学資保険が「元本割れ」 低金利時代、そんな例は少なくない

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   子どもの教育資金を貯める「学資保険」で、支払った保険料よりも受け取る金額が少ない「元本割れ」が起きたとして、大阪府に住む51歳の男性が元本割れした分を返すよう求めた訴訟が大阪高裁であり、2013年10月、和解が成立した。

   元本割れ分の返還を高裁が勧告。これを住友生命保険が受け入れたのだが、このニュースに驚いた人は少なくないだろう。そもそも、貯蓄性が高い保険商品である「学資保険」が、元本割れするとは思っていない人が少なくないからだ。

断定的な表現、説明不足あったが、「今回がレアケース」

学資保険でも「元本割れ」する可能性がある(画像は、住友生命のホームページ)
学資保険でも「元本割れ」する可能性がある(画像は、住友生命のホームページ)

   ひと昔前の、予定利率の高い時代。学資保険に、「助かった」という人は少なくなかった。受け取る保険金は支払った保険料の総額より大きく殖えたし、保険商品なので親の死亡などのリスクヘッジもできて、「貯蓄」と「保障」を兼ね備えた保険商品として、子育て世代には重宝がられた。

   もともと学資保険は支払った保険料の総額を下回る、元本割れがしにくい保険といわれていた。「貯蓄型だから」といって、安心して加入していた人は少なからずいるはずだ。

   しかし、いまは違う。保険料を積み立てているつもりでも、実際に受け取れる金額はそんなに殖えないし、それどころか元本割れを起こす場合すらある。

   今回、裁判となった51歳の男性のケースがそれだ。

   住友生命は、「『ちびっこライフ』を1990年に発売した当時は、たしかに加入時に返戻金が『殖える』ことを強調していました。断定的な表現や説明不足があったことは事実です」と、認める。

   そのうえで、「契約者の年齢や性別、また保険の保障部分など、契約によって支払う保険金額は変わってきます。今回がレアケースで、他にも(同じケースが)あるかといえばありません」と答えた。

   学資保険の商品性には問題がなく、商品を勧誘した外交員の説明不足が招いたこととしている。

保障が手厚くなると、トータルで元本割れする可能性が高まる

   学資保険は、子どもの教育資金を積み立て、貯蓄をしながら万が一の保障に対応した商品だ。高校や大学進学に向けて、100万円~200万円くらいを積み立てていくプランが一般的で、保険には子どもが0歳から10歳前後までに加入して、18歳になるまで積み立てる(保険料を支払う)。

   早めに加入したほうが月々の保険料の負担は軽くなり、死亡保障として、契約者(親)に万が一のことがあると、18歳まで支払う予定の保険料が免除されるのが基本プラン。子どもが15歳(高校入学)や18歳(大学入学)、22歳(大学卒業)のときに満期金やお祝い金が受け取れるタイプもある。

   一方、学資保険の「元本割れ」とは、返戻率が100%を割り込むことをいう。返戻率は保険商品によっても違うし、契約者の年齢や性別、契約するタイミングによっても変わってくる。

   では、なぜ元本割れが起こるのか――。一つは長引く低金利の影響で、保険会社が計画どおりに資金が運用できなかったこと(1990年ごろの予定利率は5~6%程度)。最近では保険商品の予定利率(金利)が下がっている。

   もう一つは「保障」。学資保険には、子どもの入院保障や死亡保障、親の育英年金などが手厚いものがある。保障が手厚くなれば、その分戻ってくるおカネも減る。

   たとえば、保険外交員に勧められるがまま加入すると、医療部分などが手厚くなり、トータルでみると元本割れするケースが出てきてしまうわけだ。

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