国会議事堂の裏手から、北西へ徒歩5分弱。議員会館、物々しい警備の自民党本部を横目に、横断歩道を渡る。日本の中枢・永田町――そのど真ん中にファーストフード店、「マクドナルド永田町店」がある。
政府関連機関の食堂などのほかにはランチスポットに乏しい永田町で、このマクドナルドは関係者にとって格好の憩いの場だった。ところが2013年10月31日限りで、そのマックが姿を消すというのだ。
若い女性客がむしろアウェー
24日の正午過ぎ、折からの雨にも関わらず、店のカウンターは注文客で大入り満員状態だった。
見れば、その過半がスーツ姿の男性客だ。首にはそろって、入館パスなどをぶらさげている。多くは政治担当の記者や、議員秘書などの国会関係者だろう。ファーストフード店らしからぬ、なんとも難しそうな顔が並ぶ。
ハンバーガーのセットを受け取り、注文待ちの客たちをすり抜けながら2階へと上がる。全74席の店内は、すでにぎっしり満員だった。相席をさせてもらい、ポテトをつまみながら周囲を見渡す。カウンターで見たとおり、客の大半は国会関係者と思しきスーツ組だ。しかも大部分が「ぼっち飯」で、店内は控えめに流れるBGMのほか、ほとんど会話も聞こえない。これが別の店なら、やかましくて隣と話をするにも苦労するぐらいだが。
向こうの席でせわしなくキーボードを叩く男性は、まず間違いなく報道関係者だろう。2冊のスケジュール帳とiPhoneを交互ににらむタイトスカートの女性は、議員秘書か。おじさん連中に囲まれ、心持ち小さくなってハンバーガーを食べる女子大生風の客もいるが、この店では完全に「アウェー」だ。ちなみに他のフロアも確認してみたが、「議員さま」らしきお客の姿は確認できなかった。
妙な緊張感を充満させていた店内だが、午後1時ごろ、机上のコーラが空になるころには、まるで潮が引くように皆席を立っていき、比較的空いた状態となっていた。こちらも店を出ようと階段を下りかけると、壁には常連客からのメッセージカードが多数貼ってある。「取材のたびにお世話になりました」という文言も、そこには含まれていた。