暴力団関係者らへの融資問題で、みずほ銀行は10月28日(2013年)までに金融庁に対し業務改善計画を提出する。案件としては2億円で200件程度、1件あたりの融資額は100万円程度ということで、メガバンクとしては小口融資である。もし暴力団という点を除けば、全額回収不能になっても、痛くもかゆくもない数字だ。ただ問題は部内管理だ。
みずほ銀行は、旧日本興業銀行、旧富士銀行、旧第一勧業銀行が2000年に合併したことでできた銀行だ。他のメガバンク、三菱UFJや三井住友銀行もともに合併行であるが、事実上は三菱銀行が旧UFJ銀行、住友銀行が旧三井銀行(さくら銀行)を吸収したので、同じ組織の中に二つの銀行が存在するというのではない。ところが、みずほ銀行は、旧3行が対等であり、三つの銀行が同居している状態だ。
佐藤康博頭取「金融検査でも求められなかった」
当初は、情報が担当役員止まりということで、「あれはDKBの問題」とみずほ銀行内でもささやかれていた。DKBとは旧第一勧業銀行であるが、「デクノボウ」との揶揄されていた。ところが、旧3行出身者である歴代3頭取が出席していた取締役会にも報告されていたことがわかった。これに対して、佐藤康博頭取は「金融検査でも求められなかった」といい、「隠蔽ではない」と釈明した。
筆者は元大蔵省の官僚であるが、キャリアとしては珍しく金融検査官の経験がある。そこで、金融検査の一般論として、こうした問題融資をどのように検査しているのか、金融検査で見抜けなかったのかどうかをマスコミからよく聞かれる。
正直言えば、1件あたり融資額100万程度が検査に引っかかるのは、不良債権化、回収のトラブルなど特殊事情がないと滅多にわからない。
今回のような案件は、内部者からのたれ込みによって金融庁が知ることになった可能性が高い。その情報に基づいて定期的な金融検査が行われた。その現場(場所としてはみずほ銀行内)で、各種のエビデンスが収集され問題指摘され、今回のような行政処分が行われた。