聖域化したままでは乗り切れない
自民党の石破茂幹事長は、西川氏の発言に関し、「コメや麦などの細分化された品目を一つ一つ検証するが、関税を撤廃するとも全く言っていない。(党の)公約を変更するという意味ではない」との説明を繰り返したが、事実上の「方針転換」に対する反発は収まっていない。今月中旬から始まった衆院本会議では、野党から「重要5項目で大きく妥協する発言は公約違反」との質問が続出している。
ただ、実際には「重要5項目を聖域化したままではTPP交渉は乗り切れない」(政府関係者)との見方は強い。重要5項目に当たる586品目は、全対象品目の6.5%に上り、すべて関税撤廃の対象から外した場合、日本の関税の自由化率は93.5%にとどまることになる。しかし、TPPを主導する米国などは自由化率を96~97%まで高めたい方針とみられているほか、ニュージーランドやシンガポールなどはTPPが大原則とする関税撤廃を貫くよう主張しているとされる。日本がTPP交渉に真に向き合うには、「西川発言は当たり前の話」(自民党関係者)ともいえるのだ。
実際、政府自身も西川発言を否定せず、甘利明TPP担当相は「党と連携をとっていきたい」と述べている。政府は西川発言を機とした自民党による重要5項目の精査状況を淡々と見守りつつ、「聖域」を手放そうというのが本音とみえる。