漫画「黒子のバスケ」への脅迫を続ける「喪服の死神」あるいは「怪人801面相」「黒報隊」とは、いったい何者なのか。月刊「創」編集長の篠田博之さんが2013年10月22日、犯人を名乗る人物から届いた声明文を公開し、改めてその正体に注目が集まっている。
少なくともわかるのは、犯人が新聞、雑誌などにかなり関心が深い人物ということだ。そのため一部では「出版関係者では」との推測も出ている。
犯人は月刊「創」の熱心な読者?
「黒子のバスケ」への脅迫は、「喪服の死神」を称する人物により2012年10月から同年末にかけ頻発、以後断続的に現在まで続いている。13年10月15日には「喪服」の同志を名乗る「怪人801面相」から、セブン‐イレブンなどコンビニや報道機関などに「キャラクター菓子に毒を入れた」という脅迫状が届き、商品が撤去される騒ぎとなった。
今回篠田さんが「Yahoo!ニュース個人」のページで公開した声明文は、セブン‐イレブンなどと同じ「怪人801面相」名義のものだ。消印は12日で、他社への声明文の写しなども含まれており、少なくとも今回の犯人とは同一人物によるものと見て間違いない。
犯人は他の報道機関が声明文を黙殺した場合、「創」だけでも報じてほしいと求めている。
篠田さんが編集長を務める月刊「創」は、出版・メディア業界に切り込んだ記事のほか、連続幼女殺人事件の宮崎勤死刑囚など、重大事件の被告人の手記をたびたび掲載するなど、独自色が強い誌面で知られる。いわば「コア」な読者層をターゲットにした雑誌だ。大手紙だけでなく、こうした雑誌に声明文を送ったことで、犯人の人物像はある程度絞り込まれる。篠田さん自身も、声明文は「創」によるこれまでの取り組みに言及しており、「『創』をある程度読み込んでいないと書けない」文面だったと指摘している。
2ちゃんねるでも同様の書き込み
「創」を愛読するようなメディアに関心が深い人物――こうした横顔は、今回の声明文や、これまで何度か確認されている2ちゃんねるへの書き込みでも時折顔を出している。
たとえば声明文では、脅迫状送付先の1つの産経新聞について、「部数百万切り絶賛低迷中」と表現している。産経新聞の発行部数は約160万部(日本ABC協会、2013年1~6月時点)だが、専門誌などでは一時部数急落が取りざたされ、「100万部割れ間近」とも報じられた(「FACTA」2009年5月号など)。また脅迫状の送付先の中には「黒バス」に関わる企業や報道機関に混じって、なぜか日本共産党系の出版社・新日本出版社の名があるが、こちらもすぐに出てくる名前ではない。
さらに「怪人801面相」は13年1月、2ちゃんねるで犯行の一時休止を宣言する書き込みを行っているが、その中では「ほんまにH氏賞もんやで」という表現がある。H氏賞は現代詩詩集を対象とした老舗新人賞だが、一般的に知られているとは言えない。こうした語彙や「グリコ森永事件」「赤報隊事件」をもじった名乗りなどから、「ある程度の年齢の人物」、また「出版業界関係者」ではないか、と見る声もネットでは出る。
「複数犯」説は犯人の偽装か
なお12年10~11月に脅迫を続けた「喪服の死神」は、本人の書き込み内容を信じるなら、「黒バス」作者の藤巻忠俊さんと同世代の30歳前後で男性、漫画やその2次創作が好きなオタクだ。文体も含め、上記のような「怪人801面相」の人物像とはかなり開きがある。
となると「怪人801面相」は、「2代目」の犯人なのだろうか。
しかし両者には、共通点も多い。たとえば篠田さんに届いた「801面相」名義の声明文と、12年10月の「喪服」時代の脅迫状などを比較すると、「やたらに多く貼られた10円切手」「乱雑に切り出された宛名の印字」などの特徴が一致する。また、両者はともに「腐れま○こ(伏字は編集部)」という言葉を頻繁に使用、今回の声明文にもこの言葉が確認できる。別人を称するには、やや不自然な点が多い。