日本海の呼称を「東海(トンヘ)」に変える――。韓国は再三にわたって国際機関に働きかけるなど執念を燃やしているが、今度は中国に難癖をつけた。南京大虐殺の博物館で使われている地図が、日本海表記だったと不満を漏らす。
当の中国では、日本海は一般的に通用するうえ、別称の存在は議論にもなっていない。むしろ自国の主張を押し付け、都合よく「韓国起源」を唱える姿勢に辟易しているそうだ。
中国で「東海」は東シナ海を指し、誰も日本海だとは思わない
日本海の呼称変更に熱心なのは、韓国のサイバー外交使節団「VANK」だ。これまでも米グーグルやアップルに、デジタル地図上での表記を変えるよう求めるなど、「運動」の先頭に立っている。2013年10月23日付の韓国ファイナンシャルニュースによると、中国江蘇省にある南京大虐殺記念館にVANKの視察団が訪問した際、館内にあった世界地図に日本海の表記を見つけ「不快感」を示したという。
戦争で中国と韓国は日本にひどい目にあわされた。今日では日本の歴史認識を改めさせるため「共闘」する間柄のはずだ。それなのに、日本による被害の象徴ともいえる記念館の地図が日本海となったまま放置してはいけない――。VANKの主張は、大方こんな内容だ。記事によると、記念館や中国国内の主な博物館にある地図から日本海の記述を削除し「東海」に変更するように求める書簡を、中国政府に送るそうだ。
これだけではない。韓国紙「仁川日報」10月21日付記事によると、世界保健機関(WHO)が発行した「2012年版世界マラリアリポート」について韓国の与党議員が、「韓国のマラリア分布図」のページで使われた地図に「Sea of Japan」、つまり日本海と書かれていると問題視したうえ、朝鮮半島の西側に位置する黄海が「China Sea」(中国海)と記載されていた点も「西海(ソヘ)」とすべきだと話したという。そのうえで韓国外交部や駐米韓国大使に、変更への積極的な動きを促したそうだ。
日本政府はこれまで韓国側の主張を一切認めていない。2012年4月に開かれた国際水路機関(IHO)総会では、日本海の単独表記の継続が決まっている。黄海についても、中国で呼び名が「西海」に変わったとは聞かない。
中国事情に詳しいノンフィクションライターの安田峰俊氏はJ-CASTニュースの取材に、「中国では日本海の呼称が一般的で、『東海』と言うと東シナ海を指します。日本海を『東海』と呼ぶ人はいませんし、呼び方を変えようとの動きも見当たりません」と話す。
孔子も漢方薬も「韓国起源」に怒る中国ネットユーザー
韓国から見れば、位置的に東側にある日本海は「東海」であり、西側の黄海は「西海」かもしれないが、世界地理は何も韓国中心に東西南北を決めるものではない。こうしたナショナリズムを押し出すような動きに、中国では賛同どころか反発する意見も強いと安田氏は説明する。中国のネットユーザーは特に、歴史上の発明や人物が韓国発祥だとする独自の「韓国起源説」に強いアレルギーを示す。「孔子は韓国生まれ」「漢字は韓国人が発明した」といった具合だ。「都市部の若いネットユーザーを中心に『韓国はおかしい』と物笑いにする会話は、ごく普通に交わされています」。
さらに中国人を刺激したのは、漢方薬まで「韓方薬」と呼ぶ点だ。一説によると、韓国では独自の漢方薬を研究してきたためこの呼び名が定着したそうだ。2006年10月16日付の産経新聞では、中国の伝統医学「漢方(中医学)」を「韓医学」と名前を改めて、ユネスコの世界遺産に登録する動きが出たと報じられた。実際に中国で2000年以上の歴史を持つ「端午の節句」が、韓国によって2005年に「江陵端午祭」として世界無形文化遺産に申請、登録されている。中国側の怒りは収まらない。
都内在住の中国人男性に話を聞くと、「中国で日本海は昔からずっと日本海と呼ばれていて、今も変わりません」と言う。韓国側が「東海」への変更をしきりに呼びかけている点は、中国でも多少はニュースとして報じられているとしつつも、「韓国起源説」を腹立たしく思う多くの人は「また言ってるよ、程度の受け止め方で、まともにとりあっていないでしょうね」と苦笑いだった。