一般用医薬品(大衆薬)のインターネット販売への参入が激しくなってきたことで、価格の値下げが広がってきた。
大衆薬のネット販売を原則禁じた厚生労働省の省令を最高裁が無効と判断し、販売が事実上解禁になったことや、政府が2013年6月に発表した成長戦略に薬のネット販売の全面解禁を盛り込んだことから、専業のケンコーコムに続き、ビックカメラやイオン、ヤフージャパンがアスクルと共同で販売を始めるなど、参入が相次いでいる。
最大手「アマゾン」も本格参入、「商品価格、比べて買える」
インターネット通販の国内最大手、アマゾンジャパンが一般用医薬品(大衆薬)の販売に本格的に乗り出した。すでに取り扱っているビタミン剤などの「第3類」に加えて、解熱鎮痛剤「バファリンA」(ライオン)など8000以上の種類があり需要の大きい「第2類」の販売を本格化する。
大衆薬のネット販売をめぐっては、厚労省が現在、全面解禁に向けてルールを検討中。最低1つの実店舗での対面販売を義務付けるほか、購入者が説明を受けたことを確認できる書類の保存を求める考え。医療用医薬品(処方薬)から転用して4年以内の解熱鎮痛剤「ロキソニンS」などの23品目などについては、いま解禁の是非を詰めているところだ。
アマゾンは厚労省のルールづくりを受けて、「ロキソニンS」や胃腸薬「ガスター10」などの、効き目が強く副作用リスクの高い「第1類」を取り扱う予定。売れ筋商品はほぼすべて取り扱い、少なくとも4000品目超の薬を販売する見通し。
書籍などと同様にアマゾンが直接販売する方法も開始する予定で、豊富な品ぞろえと即日配送を生かして、消費者を囲い込んでいくようだ。
そんなアマゾンの医薬品サイトでは、風邪や胃腸薬、鼻水・鼻炎、痛み止めなどのジャンル別や、ブランド(医薬品メーカー)や価格帯、出品者(薬局など)別に検索でき、ほしい医薬品を探すことができる。
たとえば、総合かぜ薬の「パブロンゴールドA微粒44包」(大正製薬)について、出品者ごとに販売価格を比べることができ、希望小売価格2625円が、1379円~1715円(2013年10月22日現在、一部送料を含む)で売られている。
ネット販売の「価格競争」で、薬の店頭価格もつられて下がる
厚労省が進めるルールづくりは遅れているものの、大衆薬のネット販売は消費者に浸透しつつある。
消費者が注目するのは、やはり価格。すでに一部の「ネット薬局」(ショップ)は解熱鎮痛薬「ロキソニンS」や胃腸薬「ガスター10」などの、効き目が強い「第1類医薬品」の販売を始めており、価格比較サイト「価格.com」の最安値(2013年10月22日現在)は、ロキソニンS(12錠)が540円(希望小売価格680円)、ガスター10(12錠)が1131円(同1659円)だった。
売れ筋の「ロキソニンS」はネットの最安値がドラッグストアの店頭価格より2割強安く、また店頭での値引き販売が行われている「第2類」もネットの最安値が店頭より1~2割安いものが多い。
ネット販売は画面上で価格が比べられ、商品が購入できるので、医薬品のネット販売が本格化すれば、ドラッグストアや町の薬局よりも安く薬を買えるのはもちろん、これまで値引きされることがほとんどなかった医薬品にも価格競争が起きる。
一般に、ネット販売は商品比較が容易なため、価格競争は激しくなりやすい。ネット販売の競争激化が値下げ競争に拍車をかけることは間違いなく、さらには店頭価格がネット価格につられて下がる可能性もある。