英国で25年ぶりに原発が新設されることになった。フランスや中国の企業が出資したのが特徴で、キャメロン首相は原発建設で低炭素エネルギー化が進み、建設中は2万5000人分の雇用が創出されろとして歓迎姿勢だ。
「脱原発」をめぐる議論が活発化する日本を横目に、世界の原発の発電量は増加を続けている。試算の方法によっては2030年には現在の2倍程度にまで増えると予想されている。
中国企業が初めて英原発に参入
英国政府は2013年10月21日、南西部のヒンクリーポイントに新たな原子力発電所を建設することで仏電力公社(EDF)と仏原子力大手アレバ、中国広核集団(CGN)と中国核工業集団(CNNC)の4社と合意したと発表した。英原発に中国企業が参入するのは初めて。
英国での原発建設は88年に建設が始まり95年に完成した「サイズウェルB」以来で、新設は25年ぶり。総事業費は160億ポンド(約2兆5000億円)で、原子炉2基を建設して2023年の稼働を目指す。同原発は、当初はEDFと英電力会社が建設計画を進めていたが、英国側が13年2月にコスト増を理由に撤退。新たな出資企業を探していた。
キャメロン首相は、
「今日は英国にとって重要な日だ。新たな原発建設に合意した日だ。ここ(ヒンクリーポイント)が、多くの原発建設のきっかけになることを願う」
と原発建設の意義を強調した。英国の原発は老朽化が進んでおり、立て替えが急務になっている。
国際原子力機関(IAEA)は毎年、世界の2030年の原子力発電量の予測を「高」「低」の2つのシナリオに分けて発表している。13年9月24日に発表された予測では、福島第1原発前の予測と比べると伸び率は低くなっているものの、依然として伸びは続くと予測している。
2つのシナリオのうち、「高」では、現在の経済成長や電力需要の伸びが続くと仮定。エネルギー消費そのものが大きく増えることを前提にしている。それに対して「低」では、現在の市場や技術、資源の動向が継続し、原発に関する法制度にほとんど変化がないことを前提にしている。報告書の表現を借りると「保守的だが、もっともらしい」予測だ。
アジアでは最大3.2倍に伸びる
現時点での世界の原発の発電能力は373ギガワットだが、2030年には、「高」で93.6%増の722ギガワット、「低」の場合で16.6%増の435ギガワットに増える。
地域別に見ると、傾向が大きく異なっているのが分かる。西欧では114ギガワットが「高」で8.8%増の124ギガワット、「低」で40.4%減の68ギガワットと、シナリオによっては大きく割合が減少する。ドイツは「脱原発」を打ち出しているほか、フランスのオランド政権も原子力への依存度を下げる方針を打ち出している。この方針が影響しているようだ。
だが、アジアに目を向けると、現在の83ギガワットが「高」の場合で3.2倍の268ギガワット、「低」でも77.1%増の147ギガワットを予測。高い経済成長が電力需要を押し上げていることが背景にある。
東欧でも、現在の48ギガワットが「高」のケースで2.6倍の124ギガワット、「低」でも64.6%増の79ギガワットと高い伸びを予測している。この予測では、「東欧」にロシアや中東、南アジアを含めて試算している。そのため、ロシアやインドの経済成長が反映されている模様だ。
天野之弥事務局長は、9月に開かれた総会で、調査結果について
「最新の予測では、今後20年は世界的に特にアジアで原発利用が継続的に伸びていることが示されている」
と話している。
安倍政権は2013年に入ってトルコ、アラブ首長国連邦(UAE)と原子力協定を結んだほか、サウジアラビアとも交渉開始で合意しており、原発輸出に向けた動きを加速させている。