「天空の城」として知られる兵庫県朝来市の国史跡・竹田城跡。雲海に包まれる美しい風景が人気を呼び、観光客が急増する一方で迷惑行為も多発するようになった。
2013年6月にユネスコの世界文化遺産登録された富士山では、いまだにゴミ問題が残ったままだ。北海道・知床ではマナーに反した写真撮影が問題視されている。
路上駐車の多さに登山道を通行禁止
朝来市によると竹田城跡は、「山城遺跡として全国でもまれな完存する遺構」で、天守台は標高353.7メートルの山頂に築かれている。南米にあるインカ帝国の遺跡に重ね合わせて「東洋のマチュピチュ」とも呼ばれる。
近年テレビで取り上げられる機会が増え、映画のロケ地として選ばれるなど観光地としての人気が高まった。だが、いいことばかりではない。市は2013年8月15日、城跡の石垣が崩れる危険性が確認されたため、該当区域周辺の立ち入りを禁止した。また10月1日からは、観覧料の徴収を開始。入場者の増加によって史跡保全や道路の整備、トイレをはじめとした関連施設の維持管理の必要性が高まったためだと説明する。
最近では路上駐車の増加が深刻だ。周辺駐車場の収容台数は約350台だが、休日となれば満車が避けられず、空きを待てずに路上にとめてしまうため近隣住民や路線バス運営会社に多大な迷惑がかかっている、と市は訴える。雲海を見るために早朝を目当てに、多くの人が深夜から詰めかけて路上駐車があふれるため、10月18日からは土日および祝日の前日の18時~翌朝8時まで登山道の通行禁止に踏み切った。早朝の訪問希望者に向けては、ふもとからシャトルバスを運行して途中の観光施設まで輸送、そこから徒歩で向かうよう促す。
訪問者のマナー違反に頭を悩ませる観光地は、ほかにもある。北海道の知床では、ヒグマの撮影をしようと観光客が危険な行為を繰り返しているという。有識者で構成される「知床世界自然遺産地域科学委員会」(大泰司紀之委員長)が10月18日、クマに近づきすぎないよう声明を出した。ヒグマが川でサケやマスを捕食する姿を撮影しようと、カメラを持って数メートルの距離まで近づいた事例があるほか、ヒグマの餌付け目的とみられるサケの死骸が大量に見つかっている。
保全状態が問題で世界遺産登録を取り消された例も
世界文化遺産登録が決まった富士山では、年間30万人を超える登山者の増加によりさまざまな問題が起きている。実は登録前、現地調査を行ったユネスコの諮問機関・イコモスが「保全の取り組みが不十分」として3年後までに対策をまとめて提出する条件を出しているのだ。いまだに全面解決していないゴミ問題、さらには登山者のトイレの準備など施設面の改善がいっそう求められる。
アルピニストの野口健さんは7月31日付のブログで、登録から3年後にユネスコによる調査が行われるのは「かなり異例」で、与えられた条件をクリアしていかないと「3年後の次のビックニュースは富士山の世界遺産取り消し、または世界危機遺産入りという事も十分に考えられる」と警鐘を鳴らす。実際に過去には、保全状態が問題となって世界遺産登録を取り消された例がある。
迷惑行為も問題だ。例えば「弾丸登山」。時間短縮のため山小屋に泊まらず、夜通し頂上を目指して歩く登山を意味するが、無理のある行程のため転倒などけがをしたり体調不良を起こしたりするケースが報告されている。
2013年10月11日付の産経新聞によると、7月1日~8月31日の期間、富士山の静岡県側で発生した遭難件数は前年比45件増の79件に上り、統計史上最悪となったという。
知名度アップにより訪問者が増えれば、地元の観光産業を潤す点でメリットは少なくない。だがそれと引き換えに、環境破壊に拍車がかかったり住民に大きな迷惑をかけたりしては元も子もない。