保全状態が問題で世界遺産登録を取り消された例も
世界文化遺産登録が決まった富士山では、年間30万人を超える登山者の増加によりさまざまな問題が起きている。実は登録前、現地調査を行ったユネスコの諮問機関・イコモスが「保全の取り組みが不十分」として3年後までに対策をまとめて提出する条件を出しているのだ。いまだに全面解決していないゴミ問題、さらには登山者のトイレの準備など施設面の改善がいっそう求められる。
アルピニストの野口健さんは7月31日付のブログで、登録から3年後にユネスコによる調査が行われるのは「かなり異例」で、与えられた条件をクリアしていかないと「3年後の次のビックニュースは富士山の世界遺産取り消し、または世界危機遺産入りという事も十分に考えられる」と警鐘を鳴らす。実際に過去には、保全状態が問題となって世界遺産登録を取り消された例がある。
迷惑行為も問題だ。例えば「弾丸登山」。時間短縮のため山小屋に泊まらず、夜通し頂上を目指して歩く登山を意味するが、無理のある行程のため転倒などけがをしたり体調不良を起こしたりするケースが報告されている。
2013年10月11日付の産経新聞によると、7月1日~8月31日の期間、富士山の静岡県側で発生した遭難件数は前年比45件増の79件に上り、統計史上最悪となったという。
知名度アップにより訪問者が増えれば、地元の観光産業を潤す点でメリットは少なくない。だがそれと引き換えに、環境破壊に拍車がかかったり住民に大きな迷惑をかけたりしては元も子もない。