「先生がアンパンマンです」と糸井重里
今回の議論のきっかけになったのは、ネット媒体の「ほぼ日刊イトイ新聞」に2013年8月に連載された糸井さんとやなせさんの対談記事「箱入りじいさんの94年」。やなせさんは自分が作ったご当地キャラ約200について、
「これが、全部、タダ。あっはっは。ただね、2つぐらいはお金をくれたんだよね」
などと語っている。役人が4人で頼みに来たこともあり「ところで、予算がないので、原稿料はタダです」と言われ、「えっ、タダですか。私もね、これは仕事でやってるんで、いくらかはもらわないと」などと言い返したこともあるという。
「すごく軽く見られてる」のかもしれないが、それでも引き受けてしまうのは、
「俺は巨匠にならないと決めたんだから、くだらない仕事であろうとやらなくちゃいけないなと」
ということなのだそうだ。キャラクターだけでなく、企業から依頼された仕事も自身の持ち出しになることも多々あった。ファンとの懇親会も年に一回開いているのだが、参加料は無料で、出演する声優さんにはそれなりのギャラを支払ったという。タダ働きどころか自分からお金を出したりしているわけで、糸井さんが、
「先生がアンパンマンです。みんな、顔を食べちゃっていいよっていう」
と語ると、やなせさんは、
「俺はアンパンマンみたいな人間じゃないと思ってたんだけど、現実にはね、どうもそうなってしまってね。稼いでも稼いでも人のために金遣っているんです」
と答えていた。