「騒音の苦情処理に行ってくる」と言い残し、1人の警察官が行方不明になった。警視庁綾瀬署(東京都足立区)地域課の男性巡査長(24)だ。2013年10月17日夕現在、所持していた実弾入りの拳銃も見つかっていない。
謎多き事件に、インターネット上では「誰かに襲われたのでは」「逃走を図ったのか」と憶測が広がっている。
足立区は物騒な街?「単独行動取るなんて自殺行為」
巡査長が失踪したのは、大型の台風26号が接近していた10月15日の深夜だ。巡査長はこの日、17時ごろから中央本町交番で勤務に就いていた。23時ごろ、騒音苦情の対応に行くと同僚に伝え、交番を出発。足立区平野の住宅街に自転車で向かい、約30分後には綾瀬署と無線でやり取りしたが、それを最後に連絡が取れなくなったという。16日未明、住宅地とは逆方向の西綾瀬3丁目の路上や川で、自転車やコードのちぎれた無線機などが発見された。しかし、実弾5発入りの拳銃や警察手帳、携帯電話は見つからないままだ。
ミステリー小説のような事件に、インターネット上でもさまざまな憶測を呼んでいる。「襲われた」とする意見では、そもそも台風の日に「騒音」の苦情はおかしいという指摘する。「台風下の目撃者の少ない状態を狙った計画的犯行かもしれん」「騒音事件は、計画的な罠。手帳と拳銃強奪が目的」と、苦情が罠だったという声が目立つ。
治安が悪い区、というイメージも「襲われた説」を補強しているようだ。足立区は数年前まで刑法犯発生件数が最も多い「治安ワースト1位」の区だった。09年に同区が行った世論調査では、足立区のイメージは「治安が悪い街」が「公園が多い街」と並んで首位。さらに、今回事件が起きた綾瀬は、25年前の「女子高生コンクリート詰め殺人事件」が起きた地だ。こうした一連のイメージから、「足立区で単独行動取るなんて自殺行為」「足立区民の俺が教えるけど足立区でも東側はガチで危険 近寄らないほうがいい」「警官1人だけで行かせるとかダメだろ!」という声が多々みられた。
元刑事「トラブル時の緊急連絡なし」に言及
一方で、「拳銃持って一人でって自殺か?」「拳銃を所持したまま逃走したのでは?」と失踪は本人の意図だったという見方もある。元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は「モーニングバード」(17日)にコメントを寄せ、「トラブルに巻き込まれた際、警官はトラブルが起きたことを示すための連絡手段がいくつかある」と指摘している。届くはずの緊急連絡がないということは、それほど緊急の状態だった可能性もあるが、警官自身が意図を持って失踪したという見立てもできるというのだ。
警視庁では現在、事件と事故の両面から捜査を続けているが、「16日の発表段階から状況は変わっておらず、現時点で発表する内容がない」(広報部)という。拳銃が何者かの手に渡ったとすれば、新たな事件が発生する可能性もある。インターネット上では近隣住民からの不安の声が広がっており、早急な解決が望まれている。