「尊大な中国」を国際社会にアピールする機会になる
裁判の期間についてライクラ―氏はWSJに、双方の言い分が対立している場合は3~5年を要するだろうと語った。仮に中国が訴訟に敗れた場合でも、知らん顔を決め込み着々と実効支配を進める可能性は否定できない。だがこれまでの国際裁判では95%以上の割合で、当事国が裁定に従ってきたという。仲裁裁判所の判断を無視すれば、国際社会から不信が高まる。中国といえども、そう簡単に国際ルールを踏みにじれないだろうとの計算だ。
首都マニラ郊外に住む30代のフィリピン人男性はJ-CASTニュースの取材に、「今回の提訴は、中国に対する抗議の象徴的な姿勢」と政府の方針を評価した。軍事力や経済力では中国が圧倒し、このまま南シナ海の島々への影響力を強化されれば訴訟に勝っても実質的には得るものがない。それでも勝訴により、道徳的に有利に立てることには意義を見いだす。
米の敏腕法律家が「チーム・フィリピン」を率いる点について、「フィリピンの人々は支持していると思いますが、それほど大きなニュースになっているわけではありません」。裁判の行方が、中国の海洋政策に大きな影響を与えないだろうと人々は少々悲観的にとらえているようだ。半面「国際社会に向けて、中国がいかに尊大で、弱者をいじめるような存在かをアピールする機会にはなるでしょう」と話した。
英フィナンシャルタイムズ電子版は2013年5月29日付の記事で、フィリピンの対中訴訟を「勇敢か、それとも向こう見ずか」と紹介した。記事の終盤では、尖閣諸島(沖縄県)を巡って中国と対立を続ける日本をはじめ、類似の問題を抱えるインドネシアとベトナムを名指しして、「フィリピンのように、仲裁裁判所を通じて自己の立場を主張するだけの勇敢さを持ち合わせていないのは情けない」と皮肉交じりに論じている。