トヨタ自動車が2010年半ばの商品化を目指している「自動運転」技術のデモンストレーションを首都高速道路で実施したことについて、国土交通省や警察庁が問題視しているようだ。
トヨタの試作車にTVカメラが乗り込んでいたため、その模様が全国に放映され、道路交通法で禁じている「手放し運転」のようすが映し出されてしまった。
首都高速での「実験」今回が初めてではない
トヨタ自動車が新たに開発したのは、自動運転技術を利用した、高速道路における次世代の高度運転支援システム「オートメイテッド ハイウェイ ドライビング アシスト」(AHDA)。先行車両と無線通信しながら追従走行する「通信利用レーダークルーズコントロール」と、全車速域で道路の白線などをセンサーで検出し、あらかじめ算出された最適なラインを走行するようハンドル操作を支援する「レーントレースコントロール」が連携しながら、安全運転の支援や運転負荷を軽減するシステムだ。
トヨタによると、この自動運転技術によって、より精緻に車間距離を制御したり、不必要な加減速を低減したりすることが可能になり、燃費の向上や渋滞の解消などにも貢献するという。
今回問題になったのは、メディアに先行公開されたデモンストレーション。試作車にメディアを載せて、車内から前方を走るクルマや手放し運転するドライバーの映像がテレビで放映されたため、目にした人も多かった。
トヨタは「公道での実験については今回の首都高速での実験を含め、これまでも関係当局から必要な許可は得ています」と話す。首都高速での「実験」も今回が初めてではなく、また手続きに問題があったわけではないようだ。
ただ、「(認可について)具体的なやり取りに関しては控えさせていただきたい」と、歯切れが悪い。テレビの放映後に、関係当局から指導などがあったかどうかは不明だ。
トヨタは2013年10月14日に開幕した「第20回 ITS世界会議 東京2013」(18日まで)に自動運転システム「AHDA」を出展するとともに、15日にも首都高速でのデモンストレーションを実施している。
自動運転「すぐにクルマを操作できることが前提」
とはいえ、どうやら今回の「自動運転」の問題点は、やはり「手放し運転」にあったと思われる。
じつは現状、「自動運転」は公道ではドライバーが常に安全を確認し、必要があればすぐにクルマを操作できることが前提になっている。あくまで人が運転する際の「補助機能」としての「自動運転」であって、そのことはトヨタも承知している。
そのため、自動運転であっても、本来ドライバーはハンドルを握っていなければならないわけだ。
一方、現行の道路交通法は、公道でドライバーがハンドルから手を放す行為を認めていない。しかし、自動運転であることをテレビの視聴者に理解させるためにはドライバーがハンドルを握っていてはわかりづらく、ハンドルから手を放してもらう必要があった。
つまり、「演出」が、関係当局からの誤解を招いた可能性はある。
国交省によると、「自動運転の定義については、まだはっきりしたことは決まっていません。(ハンドルを握っていないといけないのかどうかは)課題で、今後解決しなければなりません」と話している。