山岳遭難した父親の捜索費用が必要なので募金を――。特撮ドラマなどに出演している俳優の斎藤ヤスカさん(26)がツイッターなどでこう呼びかけたところ、疑問の声が相次いだ。ヤスカさんは、弁明に追われる事態になっている。
斎藤ヤスカさんが募金呼びかけを始めたのは、2013年10月12日からだ。
社会復帰への支援金、葬儀にも使うと説明
新潟、群馬県境の巻機山(まきはたやま)で11日、父親の茂勝さん(56)が登山中に行方不明になった。茂勝さんは、新潟県南魚沼市内で霊能者として活動しており、報道によると、10日から1人で登山に出かけていた。翌11日夕になって自宅マンション管理人から「帰ってこない」と南魚沼署に連絡があり、署員らが捜索活動をしている。
これに対し、ヤスカさんは、過去に特撮テレビドラマ「轟轟戦隊ボウケンジャー」やミュージカル「テニスの王子様」に出演した経歴を生かし、ファンらに支援を呼びかけたのだ。ツイッターやブログでは、警察などの捜索では限度があるとし、民間人に捜索を頼めば、1人当たり1日2~5万円ほどかかり、10人チームなら50万円ほどになる可能性があると南魚沼署から説明を受けたとした。民間ヘリを飛ばせば、さらにお金がかかるとも訴えている。
公式サイトでは、集めた資金について、「生還の場合、斎藤茂勝の社会復帰への支援金及び新潟県山岳遭難防止対策協議会への募金、最悪の場合、斎藤茂勝の葬儀及び追悼、新潟県山岳遭難防止対策協議会への募金、又、これらに準ずるものに変えさせて頂きます」と説明した。そして、「たった一人の父にとって、斎藤ヤスカが、ヒーローであり続ける為に」と締めくくっている。
ブログのコメント欄などには、ファンらからとみられる書き込みが相次いでいる。「娘の入学資金の10万を振り込みました」「子供の学資保険解約して振込します」といったものだ。
一方で、捜索費用を他人に頼ることに対し、批判も次々に寄せられ、ツイッターなどが炎上状態になった。
「僕個人の財産を残す事は考えていません」
「虫が良すぎる」「自腹は嫌なのか」「親父の葬式代も他人に出させる気なの?」といった疑問だ。
これに対し、斎藤ヤスカさんは、ツイッターなどで対応に追われ、自らも捜索費用を負担するとして、「僕個人の財産を残す事は考えていません」などと説明した。ヤスカさんは、芸能プロダクションの代表を務めているが、貯金や財産はなく、ヘリを飛ばすお金もないと理解を求めている。
社会復帰への支援金とは、父親の茂勝さんがけがをした場合の手当てを指すとし、葬儀及び追悼に使うとしたのは、募金が余ったときに均等に返すのが難しいからだとした。
さらに、捜索のための募金が過度に集まることを防ぐために、募金を停止したことを明らかにした。
また、警察から自らの芸能プロに対し、捜索の詳細は公表しないなど情報取扱の指導を受けたことも明かした。「なりすましや、詐欺の的にならない事、また、募金を集める際の使用目的の明示などが、指導内容でした」とも言っている。そのうえで、ブログでは、「私が起こした行動で、混乱を招いた事、また、私の判断ミスで、ご不安、ご心配をおかけした事をお詫び申し上げます」と謝罪している。
ヤスカさんは警察から注意を受け、募金呼びかけを中止したと一部で報じられたが、南魚沼署の副署長は、取材に対し、ヤスカさんに注意したり、指導したりしたことを否定した。
「警察が家族に説明したことをブログなどで公表するのはどうかと思い、こと細かに話を載せるのは止めてほしいと要望しただけです。捜索する民間人の話も絡んでおり、金額など何でも載せるのはいかがなものかということです」
募金呼びかけについて警察がコメントしたことはなく、ヤスカさんが独自に解釈して言っているだけではないかとしている。
茂勝さんは2013年10月15日夕現在、依然として安否が不明のままだ。