イタリアと並んで世界的にも珍しい記者の国家試験制度を持つ中国が、さらに締め付けを強めている。「マルクス主義」など新たに6種類の研修を受け、試験に合格しなければ記者としての活動を続けられなくなるというのだ。
習近平国家主席は、2013年8月には「イデオロギー工作は極めて重要な任務」と述べたばかり。この方針が確実に実行に移されつつあるようだ。
「誤報防止」についても教える
新華社通信が13年10月10日に報じたところによると、国家新聞出版ラジオ映画テレビ総局が北京で会議を開き、国内に25万人いるメディア業界の全職員に職場内教育を受けさせることを決めた。カリキュラムは政府が作成し、教材を各職場に無料で配る。
その内容は「中国の特色ある社会主義」「マルクス主義報道観」「報道倫理」「報道法規」「報道取材・編集のルール」「誤報防止」の大きく6つの分野をカバーし、13年12月末までにカリキュラム修了を求めている。14年1月から2月にかけて全国統一の試験を行い、合格者は14年版の記者証を更新できる。不合格者には追試が待っており、合格しない限り記者としての活動はできない。
政府高官「インターネットが意見を戦わせる『主戦場』になっている」
以前から、中国では記者には国家免許が必要だったが、入社後に一度合格すれば更新の必要はなかった。
免許更新制について報じられるのは今回が初めてだが、研修でマルクス主義を教える計画は、すでに8月末時点で報じられていた。新華社通信は、研修を担当する政府高官の
「現代のメディアは以前よりも複雑化しており、メディア関係者は、さらに多くの責任を引き受ける必要がある。インターネットが意見を戦わせる『主戦場』になっており、責任ある行動に欠けているため、多くの『ルール破り』が起こっている」
という発言を紹介している。規制強化を狙っているのは明らかだ。
この報道が出る直前には、習近平政権が「インターネット上のうわさ」に対抗する方針を打ち出したばかり。このことが影響しているのか、7月から8月にかけて政府高官の汚職疑惑を捜査するように求めた週刊誌記者が「トラブルを起こした」容疑で身柄を拘束されたり、著名なコメンテーターが売春を斡旋したとして拘束されたりするなど、メディア関係者に対する取り締まりが相次いでいる。
香港の英字紙「サウス・チャイナ・モーニングポスト」によると、記者からは方針に対する表だった批判は出ていない。だが、ミニブログの「微博」に目を向けると、
「マルクス主義は大昔勉強したが、勉強すればするほど分からなくなる」
「開いた口がふさがらない」
といった不満の声が出ているという。