半導体製造装置の国内首位で世界3位の東京エレクトロンと、世界首位の米アプライドマテリアルズが2014年後半に経営統合し、売上高が1兆円超の巨大企業が誕生することになった。
世界市場で激しく競い合うライバル同士が手を組む背景には、スマートフォンなどモバイル機器の進歩に伴う市場環境の激変がある。巨大化して発言力を強める顧客の半導体メーカーに対抗する狙いもあり、今後は業界再編が加速する可能性も出てきた。
売上高は1兆円3000億円
両社は持ち株会社をオランダに設立。いずれも上場廃止にし、持ち株会社が東京証券取引所と米ナスダック市場に上場する。持ち株会社の会長は東京エレクトロンの東哲郎会長兼社長が、最高経営責任者(CEO)にはアプライドマテリアルズのゲーリー・ディッカーソンCEOが就任予定だ。
統合によって単純合計で売上高が約1兆3000億円になり、半導体製造装置の世界シェアは約25%に達する。売上高で世界2位のオランダASMLの約2倍強の規模となる。
東会長兼社長は9月24日夜に東京都内で記者会見し、「互いの商品がほとんど重複せず補完し合える。統合でコスト削減も期待できる」と統合メリットを強調した。統合後の初年度に2.5億ドル、3年で5億ドルの相乗効果が出ると見込んでいる。
国境を越えたトップメーカー同士が手を組んだ背景には、スマートフォンやタブレット端末などモバイル機器の進化がある。これら端末に必須の半導体は小型化が急速に進み、それに伴って半導体製造装置も微細化などの技術が限界に近づきつつある。身に着けられるウエアラブル端末の開発も進み、顧客の半導体メーカーから「さらに高度化した技術を要求される」(業界関係者)ようになった。ただ、技術開発は容易ではなく、開発費は膨らむ一方だ。
単独で生き残るのは難しい
世界首位と3位であってもこうした開発費負担は重くのしかかっており、その危機感から昨年12月にアプライドマテリアルズ側の打診で統合交渉が始まり、つまずくことなくゴールインした。業界からも「2社の統合には驚いたが、再編自体は当然の流れ」との指摘も少なくない。
一方、顧客である世界の半導体メーカーは、日本勢が脱落していくなか、米インテル、韓国サムスン電子、台湾TSMCへと集約され、今では3社は「ビッグ3」と呼ばれるまでになった。圧倒的な生産力を誇る巨大メーカーとなったことで、今では「ビッグ3の仕事を受けられなければやっていけない」とまで言われるようになっている。今回の統合には、開発費負担の軽減に加え、こうした発言力を強める半導体メーカーに対し、価格交渉力を取り戻す狙いもあった。
いずれにせよ、厳しい市場環境の下、半導体製造装置メーカーが単独で生き残るのは難しくなっている。世界規模で再編機運が盛り上がれば、製造業全体にも影響を与えそうだ。