10月10日は「転倒予防の日」 事故はどこまで施設や現場の責任か

富士フイルムが開発した糖の吸収を抑えるサプリが500円+税で

   「テン(10)とう(10)=転倒」にひっかけて、10月10日は「転倒予防の日」なのだという。それに近い日曜日の2013年10月6日、転倒予防医学研究会が東京大学で開かれた。高齢者が寝たきりになる最大要因の転倒・骨折を防ごうと医師、看護師、理学療法士、薬剤師や介護関係者、スポーツ関係者らが集まる研究会は2004年に発足した。今回が10周年の記念すべき会とあって「転倒事故はどこまで施設、現場の責任か」という刺激的な題のシンポジウムが関心を集めた。

転倒は事故というより病状の一部と考えるべき

   転倒事故は家庭でも多いが、病院や介護施設でも少なくはない。後者で起きると病院や施設の管理責任が問われ、賠償訴訟に発展することもあり、割り切れない思いを抱く関係者もいる。

   国立長寿医療研究センターの鳥羽研二院長は、そうした意見を代弁。日本では病院1床につき年間1回の転倒・転落があり、ゼロにはできないこと、ひざが曲がって足が上がらなくなると転倒が増えるなど、転倒は事故というより、病状の一部と考えるべきと強調、薬を減らす、英国のように看護師を3倍にする、など有効な方策も提示した。

   杏林大学保健学部の川村治子教授は転倒事故1500例の分析結果を発表した。看護師が介助・観察中が4分の1で、4分の3は患者が自分で行動中の転倒だった。後者は、判断力のある患者の夜間の排泄時と、認知症患者などの行動が多かった。看護体制を強化しなければ十分な予防は不可能といえる。また、転倒時のけがや後遺症、見逃しを減らす対策の重要なことも指摘した。

   東京海上日動火災保険の小島剛さんによると、権利意識の高まり、情報の入手が容易になったことでトラブルや訴訟が増えている。大きな問題にしないために初期の対応に細心の注意が必要との指摘だった。

   マスコミの立場から筆者(田辺)も参加した。マスコミは弱者の味方の建前から患者サイドに立ち、責任追及主義に陥りやすいが、背景には「発言しない日本人」があることを指摘した。施設や現場に対する責任追及が厳しすぎるのではないかと思っても、関係者が問題提起しなければマスコミや国民の意識は変わらない。こうした率直な議論が常識を変え、転倒予防につながる、と研究会の活動に期待することを話した。

(医療ジャーナリスト・田辺功)

姉妹サイト