北朝鮮が韓国にGPS妨害電波 航空機への被害も1137件、日本路線に影響ないのか

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   全地球測位システム(GPS)に対する妨害電波が北朝鮮から発信され、韓国の交通機関に「深刻な被害」が出ていることが明らかになった。特に航空機に対しては、ここ3年強で1000件を超える影響が出ているという。現時点では日本に関係する路線への影響は確認されていないが、それでも「怪しい」ケースはあるようだ。

回を重ねるごとに被害件数が急増

韓国では航空機への被害が1137件も確認された(写真はイメージ)
韓国では航空機への被害が1137件も確認された(写真はイメージ)

   聯合ニュースなど複数の韓国メディアが2013年10月9日に伝えたところによると、科学技術などを所管する「未来創造科学部」が同日、与党セヌリ党に所属するキム・ギヒョン議員に「GPS電波妨害に関する被害事例」と題した報告書を提出した。

   報告書によると、北朝鮮によるとみられる妨害電波は過去3つの時期に集中的に発信され、合計1402件の被害が確認された。内訳は航空機1137件、艦艇4件、船舶225件、漁船36件と、航空機への影響が全体の8割以上を占める。被害件数は回を重ねるごとに急増。航空機の場合、10年8月の妨害では15件だったが、11年3月は106件、12年4月は1016件だった。

   それ以外にも、携帯電話3社の基地局にも影響があり、通信品質が一時的に低下したという。

   ここで気になるのが日本への影響だ。日本と韓国を結ぶ路線はもちろん、日本と北京や大連を結ぶ便も韓国上空を通過しているためだ。結論からすれば、韓国の航空当局が航空情報(ノータム)を出して注意を呼びかけたこともあって、実害は出ていないようだ。

   日本航空(JAL)広報部や全日空(ANA)広報室の説明によると、両社の便では妨害電波が原因の不具合は報告されていない。国土交通省の管制課でも「そのような話は上がって来ていない」と話している。少なくとも日本側で被害は確認されていないようだ。

   また、GPSは航法装置の中では補助的な存在に過ぎず、仮にGPSに不具合が出たとしても安全に運航できることになっている。

JAL、ANA、国交省は「影響なし」でも韓国LCCには怪しいケースが…

   だが、韓国側の報告書で指摘されている件数にカウントされているかどうかは定かではないものの、「怪しい」ケースは報じられている。12年5月10日に朝鮮日報が報じたところによると、4月29日午後、大韓航空の子会社にあたる格安航空会社(LCC)のジンエアー機(新千歳空港発仁川空港行き)が着陸に向けて高度を下げていたところ、対地接近警報装置(GPWS)が誤作動した。新型のGPWSではGPSを活用しており、衝突を回避するために、不用意に地面に近づくと警告音が鳴る。機長は誤作動に驚き、機首をいったん上げて上空を旋回し、着陸をやり直した。乗員・乗客にけがはなかったが、「一歩間違えれば大事故につながりかねない危険な状況だった」(朝鮮日報)という。

   金泰栄(キム・テヨン)国防相(当時)が10年10月に国会で明らかにしたところによると、北朝鮮はトラックに載せて運べるタイプの妨害電波発信機をロシアから購入しており、半径50~100キロメートルの範囲にわたってGPSに障害を与えることができるという。韓国政府は、一連の妨害電波は比較的ソウルに近い北朝鮮南部の開城(ケソン)から発信されているとみている。

   ただし、北朝鮮郵政省は12年5月18日、国営朝鮮中央通信を通じて、

「一言で言えば、一味(韓国政府)は自らの不名誉を振り払おうとして他人を非難するという根深い悪習に固執している」

と関与を否定する談話を発表している。

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