メンツ丸つぶれの金融庁とバトルに
ところが、わずか4日後の8日、初めて佐藤康博頭取が会見したが、その内容に驚いた。佐藤頭取のほかにも、塚本隆史前頭取、西堀利元頭取も知っていたというのだ。この歴代3頭取の出身は、佐藤頭取-旧興銀、塚本前頭取-旧第一勧銀、西堀元頭取-旧富士銀と銀行全体が組織ぐるみで行った可能性まで示唆される。
これを先ほどの行内抗争の邪推を発展させると面白くなる。その伏線として、佐藤頭取が13年3月に行ったみずほグループ人事だ。なんと、旧富士銀行出身者を副社長・副頭取から一掃したのだ。これは当時の金融界でも話題だった。ここにきて、みずほグループでの人事統合は、旧興銀への一本化が明らかになった。
9月の金融庁による業務改善命令の端緒は、銀行関係者からの金融庁へのたれ込みだろう。筆者の金融検査官の時の経験でも、人事が揺れているときはよくある話だからだ。ひょっとしたら現佐藤体制への矢だったかもしれないが、現佐藤体制はそれを対外発表で旧第一勧業銀行の問題と片付けた。それに対して、金融庁の激怒を誘発するような二の矢が放たれて、みずほ銀行全体の問題として現体制は総入れ替えを余儀なくされる。こんな邪推が働く。
金融庁は9月27日に一度下した業務改善命令の根底が覆ってしまったのだから、メンツ丸つぶれだ。金融庁は10月9日、同庁に報告した内容が事実と異なっていたところに関し銀行法に基づく報告徴求命令を出した。これから金融庁とみずほ銀行のバトルが始まるだろう。
ドラマ「半沢直樹」を見た後なので、こんな妄想をつい抱いてしまうような、みずほ銀行問題の急展開である。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2005年から総務大臣補佐官、06年からは内閣参事官(総理補佐官補)も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「財投改革の経済学」(東洋経済新報社)、「さらば財務省!」(講談社)など。