韓国で「日本が好きだ!」と公言する若者が続出している。
「嘘だ!」という人も多いだろう。なにせ「親日派」という言葉がそのまま「売国奴」を意味するようなお国柄だ。ところが韓国の掲示板サイトなどでは、実際にこんな投稿を見かけることがある。
「自分は日本が好きだ。良いものを良いといって何が悪い?」
「俺、いつかきっと日本に帰化するんだ……。秋葉原に遊びに行って日本の女子と結婚して娘には『あかり』って名付けるんだ……」
「韓国は日本に追いつくことなんてできない。そんな可能性は存在しない」
「日本」と「ヒロポン」でイルポン
もちろんこうした投稿は決して多数派とはいえない。他のユーザーを煽るための意図的な発言もあるだろう。だが、「反日」一色と評される韓国ネットの中に、少なからずそんな声が存在するというだけでも、ちょっとした驚きがある。
韓国の若者たちは彼らを、「イルポン」と呼んでいる。
「日本(韓国語でイルボン)」と、覚せい剤を指す「ヒロポン」を組み合わせた言葉で、「日本中毒」とでも意訳できるか。他人への迷惑を顧みない盲目的な愛国的言動=「クッポン(国+ヒロポン)」から派生し、特にここ数ヶ月で盛んに使われるようになった。
その特徴の1つは、自国への極端な否定だ。たとえばある「イルポン」は、韓国では日本に比べ詐欺事件などの発生件数が圧倒的に多いと指摘、自国を「嘘つき社会」「精神が破綻している」「一流国家の資格なし」などとさんざんにこき下ろす。
そして、「それに比べて……」と日本を盛んに持ち上げるわけだ。当然、他のユーザーからは叩かれまくるが、「隣の国が好きなことのどこが罪?」と開き直ってみせた。
彼らは歴史問題をめぐっても、慰安婦を「金儲け」「被害妄想」などとけなし、「日本統治のおかげで韓国は発展できた」と、日本の保守派さながらの主張を唱える。さらに極端になると、ブログに旭日旗の画像を掲げ、
「テンノウヘイカ、バンザイ!」
と叫ぶ、日本の「ネトウヨ」顔負けのイルポンもある。
ネットの普及で「自国の問題」知ってしまう?
イルポンの正体は、いったい何者なのだろうか。韓国内では10代など若い世代が多いと見る向きが多い。2012年には、「自分は大日本帝国臣民だ」などと自称していた13歳の韓国人少年が太極旗を燃やした写真をネットに公開し、検挙される事件が実際に起こった。この事件は日本でも話題となったが、実はほかにもこの前後には同様の騒動が2件発生している。彼らはともに10代で、典型的なイルポンだった。
ある韓国ブロガーは、イルポンが生まれる理由をこう分析する。
「問題は、ナショナリズムを強調し、反日感情をあおる韓国内の教育だ。子どもたちは極端な愛国者として育てられるが、中高生にもなればネットの普及もあり、どうしても自国の問題点を知ってしまう。そうした若者の一部が、ナショナリズムの代わりに日本に拠り所を求めるのでは」
アニメに代表される日本文化の影響も指摘される。完成度の高い日本アニメなどを通じて日本そのものへの関心を深めた若者たちが、10代特有の「自分は他人とは違う」という反抗心もあいまって、ことさらに「日本好き」を標榜するようになるとの見方だ。こうしたことから、イルポンを「中2病」(韓国でも日本に近い意味で使われている)の一種だと見る向きもある。「そのうち治る」との楽観的見方だが、その真偽は定かではない。