かつては「ツイッターの伝道師」とも言われたソフトバンクの孫正義社長のツイートが途切れて1か月が経った。2013年9月には、アイフォーン(iPhone)の新機種発売を直前に控えていたことから、販売戦略上ツイートを避けていたとの見方もあった。
だが、新機種発売から10日が経っても沈黙を守ったままだ。9月30日の新製品発表会でも、ツイッターは全くと言っていいほど話題にのぼらなかったが、J-CASTニュース記者の質問に、沈黙の理由を明かした。
これまでに5900回近くツイート
孫社長はこれまでに5900回近くツイートしており、最後のツイートは8月30日夜の、
「被災地高校生の留学支援『TOMODACHIリーダーシップ・プログラム』に参加した100人が無事帰国。米国での学びと被災地の現状を9/1(日)13:30~アップルストア銀座にて報告します。ぜひ高校生の生の声を聞きに来て下さい」
というもの。それ以降、1か月にわたって沈黙を守っている。
孫社長は3年前の10年5月の発表会では、新製品の半分以上が「ツイッター対応ケータイ」で、
「朝起きて真っ先に触るのがツイッター。新聞読んだり歯を磨いたりするよりも、まずはツイッター」
と、ツイッターにのめり込む様子を明かした。新製品もこの情熱は注ぎ込まれ、
「『ツイッターがついていないとケータイじゃない』、こういう時代がくる」
「(世界標準から外れた『ガラパゴスケータイ』を揶揄する)『ガラケー』という言葉があるが、今思いついた『ツイケー』(ツイッターケータイ)という言葉を流行らせたい」
と述べるほどだった。
発表会で自分からツイッターに触れたのは1回だけ
だが、13年9月30日に行われた新製品発表会では、孫社長が自分から「ツイッター」という言葉を発したのは1回のみ。それも、過去の電波のつながりにくさを、
「(ホークスの)打線はつながっても電波はつながらない」
と指摘されたのがツイッターを通じてだった、という文脈だ。
この沈黙をめぐっては、様々な憶測が出ている。例えば9月20日朝にフジテレビで放送された「とくダネ!」では、iPhone新機種に関係があるとの説。だが、発売後も更新されておらず、この説は必ずしも正しくないようだ。
ネット上の罵詈雑言に心が折れたとの見方をするのは、ソフトバンク社長室長の嶋聡さん。文藝春秋13年10月号の「ツイッター敗戦 わが懺悔録」で、上杉隆氏のインタビューに答えて、
「政治家なら半分が敵だから、いろいろと言われても『言っとるな』としか思わないでしょう。孫正義という人物は、若い時からベンチャーの雄。普通、どんな人でも会ったら取りあえず丁寧な言葉を使うでしょう。でもツイッターではそれがなくなっている。あれだけひどいことを言われて。私は、気にしないほうがいいですよ、と言う訳ですが、でもちゃんと見てるんですよ。すごく謙虚です。それ(ツイッター)を活かしたこともありますが、ボコボコに書かれるとね」
と、孫社長の気持ちを代弁した。
「なんか、おれの動きを読まれないかな」
ただ、孫社長本人が囲み取材でJ-CASTニュース記者の質問に答えた内容からすると、企業戦略的な意味合いもあるようだ。
「アメリカとか日本とかで一言僕がツイッターにつぶやくと、それで次の僕が動く手が想像されちゃうのかなぁ、と。実は皆さんにまだ言えないような驚くような手をいくつか考えて、色んなことを努力して、今、種を仕込んでいる最中。『誰々と会った』とか『今日はどこどこにいる』ということをつぶやくだけで、『なんか、おれの動きを読まれないかな』という風に心配になっちゃう」
ただし、「まったくやめてしまった」という訳でもないようで、今後も多少はツイートする考えのようだ。
「うかつに一言つぶやいただけで、それが読まれるのもいやだなー、と思うと、ついつい、つぶやけなくなっちゃった。何日かつぶやかないと、そのうち、それがパターンになっちゃった。でも、また時々これからつぶやきたいと思う」