賃上げで「良い物価上昇」めざす 安倍政権「政労使」の議論深まるか

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経済界は「競争条件の同一化」要請

   一方、企業側は、20日の会議後、米倉経団連会長が「企業の収益改善により、従業員の労に報いることが可能な環境になりつつある。景気の回復に伴って順次、報酬の改善に取り組みたい」と賃上げに一定の理解を示し、安倍政権との協調姿勢を強調。「賃金水準は個々の企業の支払い能力に応じ、労使間で決めるもの」(米倉氏)という国の介入に否定的な本音はひとまず封印した。

   だが、本格的な人件費アップに極めて慎重な経済界の基本姿勢に変化はない。実際、21世紀になって以降は国際競争力低下を嫌って、賃金水準全体を底上げする「ベースアップ(ベア)」を行わない流れが定着。首相が今年の春闘で賃上げを呼び掛けた際も、ボーナスではトヨタ自動車などが満額回答するなど増額が相次いだものの、ベアを実施したのはイトーヨーカ堂やローソンなど大手流通業の一角にとどまったように、「経済成長し、企業収益が増えて初めて賃金が上がる」(岡村日商会頭)と、過剰な賃上げ期待にはしっかりクギを刺す。その傍ら、米倉会長が「大胆な規制改革やイコールフッティング(競争条件の同一化)の実現を政府が推進してほしい」と注文を付けたように、法人減税や労働規制緩和を期待している。

   安倍政権は、長期安定政権にデフレ脱却が不可欠として、企業減税の大盤振る舞いまでして賃上げへの好循環につなげようと躍起になっている。政府内では、賃上げを確かなものにすべく減税分の使途公表を経済界に求めるとの議論まである。さすがに、「そこまでやれば社会主義で、あまりに筋が悪い」(経済産業省筋)との批判もあるが、「首相は案外本気」(政府関係者)との声もある。

   いずれにせよ、せっかくできた政労使が一堂に会する場だけに、目先の賃上げだけでなく、非正規雇用の増加や格差拡大という社会の在り方にもかかわる構造的な問題にも視野を広げた腰を据えた議論が求められる。

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