宮崎駿「『風立ちぬ』は幸運な作品だ」
ところで、元の宮崎監督インタビューを読めば、「戦争賛美」を理由に酷評、というのは少し解釈に無理がある。
そもそも問題の発言は、戦後に刊行された元パイロットによる証言への懐疑を語る部分で出ている。当事者の回想にはどうしても誤りが含まれており、正確な「航空戦史」を作るには客観的な調査が必要だが、不十分なまま主観に基づく「零戦神話」がひとり歩きしている――という、「軍事オタク」宮崎監督らしい見解だ。
「永遠の0」に言及しているように見える部分は、同作を直接批判しているというよりは、同作に代表される「零戦神話」の再生産へのいらだちというニュアンスが強い。「永遠の0」というタイトルも出してなければ、内容にも踏み込んでおらず、あくまで一般論としての触れ方だ。他の箇所では零戦のフォルムについてインタビュアーを置いてけぼりにして喋り倒す場面もあり、「オタクゆえの愚痴」という印象を受ける。
なお偶然と見られるが、百田さんが自作を「可哀相な作品」と評したのに対し、宮崎監督は「風立ちぬ」を「幸運な映画」と述べている。また「風立ちぬ」では宮崎監督が試写を見ながら涙を流したことが話題になったが、百田さんも映画版「永遠の0」の試写会で何度も泣いたそうだ。