過去には「早売り」の雑誌をスキャンして流出
藤原さんは、編集部には紙の原稿を渡したと発言している。通常、担当編集者は原稿を受け取ると、チェックして印刷所に入稿、戻ってきたものの状態を確認して校了する。印刷所では製版、刷版といった工程を経て印刷に移る。刷りあがったあとは他の作品などと合わせて製本し、書店へ流通するわけだ。
この一連の流れの中で何かが起きた。入稿時には紙原稿がデジタルデータ化されているはずだ。作業中に誰かが悪意を持ってネットにデータを上げた、もしくはデータ処理の際に外部からサイバー攻撃を受け、盗まれた――。もちろん版元も印刷会社も、情報漏えいには万全を期しているはずだし、確たる証拠は今のところ見つかっていない。ただ、印刷後の雑誌をスキャンしたものではなく、原画のデータが流出したとすれば、製本前に何かが起きたと推測してもおかしくない。たまたま原稿が道に落ちていて、拾った人がネットにアップしたということもありうるが、可能性は限りなくゼロに近い。
過去にも発売前の漫画をネットに流出させたとして、摘発された事例がある。実は雑誌の場合、ルール違反ではあるが一般発売日よりも前に店頭に並べる書店は存在するようだ。こうした販売店を利用したのか、入手した雑誌をスキャンしたりデジカメで撮影したりして、ファイル交換ソフトでばらまく、あるいは動画投稿サイトでページごとに見られるように小細工するという事件が起きている。また全く異なる例だが、漫画家が出版社に預けていた原稿が、知らないうちに古書店で売られていたこともある。出版社は倒産し、漫画家は原稿の返却を求めて古書店を相手に訴訟を提起、最終的に和解した。
だが今回のように、印刷前のデータ段階でネットに漏れたというのはまれで、藤原さんはしきりに「不思議だ」とつぶやいていた。海外に読者が広がっているのを喜んでいるだけに、違法にアップされて勝手に翻訳された自作がファンの目に触れるというのは不本意だろう。