2013年にスタートした女性向けアニメ作品のDVD&Blu-ray(以下BD)が好調に売れている。中でも注目されているのは、水泳部に所属する美系男子高校生たちの日常を描いた「Free!」(7月放送開始)だ。
9月9日~15日集計のオリコンDVDアニメ週間ランキングでは第3位という快挙を成し遂げ、男性陣からも「奴らの購買力すげーな」と驚きの声があがっている。
「京アニ」歴代人気作に迫る勢い
「Free!」を手がける京都アニメーションは、「涼宮ハルヒの憂鬱」「らき☆すた」「けいおん!」など、いわゆる萌え系アニメでヒットを飛ばしてきた。質の高さにも定評があり、ファンも多い。「Free!」は京アニとしては異色の作品で、男性キャラをメーンにしたばかりか、女性うけを狙ったような描写が度々登場する。1話目は筋骨隆々とした主人公の入浴シーンにはじまり、裸エプロン姿までお目見えした。
その後も女性ファンを中心に圧倒的な盛り上がりをみせているが、9月11日に発売されたDVD1巻は、オリコンDVDアニメ週間ランキングの第3位に食い込んだ。ドラゴンボールやジブリ作品など大御所に囲まれつつの堂々のトップ3入りだ。BD1巻もBD総合ランキング同じく第3位を獲得している。DVD&BDの売り上げは2万5000枚を上回るとも伝えられ、京アニ歴代人気作品のベスト3にも迫る勢いだ。
「女性向けアニメ」激増を危惧する声も
こうした成功に「奴らの購買力すげーな」「京アニの方針は間違ってなかった」という声があがる一方、一部の男性アニメファンは複雑なようだ。京アニやアニメ業界が新たに市場開拓すること自体は悪くないが、今後、女性うけする作品ばかりに力を入れてしまうのではないか、と危惧する声も少なくない。
実際、放送開始後、「こっち方面の商売に味をしめて、萌え系アニメに戻ってこなくなったら心配だわ」「明らかにターゲットの対象外なのは正直寂しいな 技術は業界最高峰なんだし(略)婦女子も男も楽しめるアニメなら一番ありがたいのだが」「ホモネタが流行ってるのをいいことに腐女子が調子に乗って、ついでにアニメ会社も調子に乗って、しまいには腐女子以外寄り付かなくなり、結果コンテンツが潰れると予想」といったコメントもインターネット上に多数寄せられていた。
10月2日からスタートする京アニの新作は、鳥居なごむさんによるライトノベル「境界の彼方」を原作にした同名テレビアニメ作品だ。半妖の少年と、ある一族の生き残りの少女をめぐるアクションファンタジーだという。女性向けアニメ偏重化はとりあえず免れたようだ。これに対し、「境界の彼方が3万売れたら萌え豚(編注:萌え絵に萌える二次元創作ファンの蔑称)の勝ちな」と「Free!」に対抗心を燃やすファンがいる一方、期待する声もたくさんあがっている。