ワタミグループ創業者の渡邉美樹氏が理事長を務める、学校法人郁文館夢学園(東京・文京区)のサイトに掲載された渡邉氏のメッセージが話題になっている。就職してから最初の3年間で、人生で取り返しがつかないほどの大きな差が生じるという発言だ。渡邊氏といえば、「ブラック企業」などと批判されることもあるが、この発言について賛同する声もでている。
人生のスタートラインに立てるかどうかの分岐点
郁文館は1889年に創設され、夏目漱石の小説『吾輩は猫である』に登場する「落雲館」のモデルにもなった学校で、少子化などで経営不振に陥っていたが、2003年に渡邊氏が理事長に就任して再建に乗り出した。学校法人名を郁文館学園から郁文館夢学園に変えたほか、「私たちの学校経営は先生が生徒のために死ねる経営です。その経営についてこられない人はどうぞ辞めてください」と宣言し、教職員に能力給制度を導入するなどの改革を行ってきた。
2013年9月23日ごろから話題になっているのが、郁文館夢学園のサイトに載った「理事長の想い」というページだ。同校がスローガンとして掲げる「25歳 人生の主人公として輝いている人材を育てます。」に込めた思いを、渡邊氏が説明している。
「年齢で言うと『25歳』。就職してからの3年間で、その人の人生に取り返しのつかぬほどの大きな差」が生まれ、「夢の実現に向けて、羽ばたくことが許されるのがこの25歳」であり、「人生のスタートラインに立てるかどうかの分岐点」になるとして、郁文館では生徒をこのスタートラインに立たせるのが目標という。
毎年1万人以上の大学生と関わるなかで、「ワクワクしながら社会人になろうとする者」の少なさに驚き、苦労して入った会社を3年経たずに3割の人が辞めてしまうのを見て、日本の教育に危機感を抱いてきたそうだ。
「しかし、どうしようもない正論だな」
渡邊氏は以前から、たびたび働き方について独自の主張を展開しており、2013年1月21日付プレジデントオンラインの記事では、「人間が働くのは、お金を儲けるためではなく人間性を高めるためである」という信念や、ワタミグループは「額に汗しないで稼ぐお金はお金ではない」と定めていることを明かし、「ようは給料は払わないけど死ぬほど働けって事」「人間性が高くなりすぎると死ぬわけか」などの皮肉めいた反応がツイッターや2ちゃんねるで相次いでいた。
しかし、今回の25歳までで「取り返しのつかぬほどの大きな差」が付くという発言に対しては、ネットで賛同する意見も出ている。
ツイッターや2ちゃんねるでは、渡邊氏のメッセージを受けて
「あーでも、これは間違ってないわ」「これは事実。能力的な成長はするけど、根本的な意欲とかは20代前半までに固定される」「25歳というのは個人差があると思うが確かにそうかも・・・という気はする。この人は立身出世という面"は"成功者だから説得力はあると思う」「しかし、どうしようもない正論だな。25までにやるべきことをやらなかったやつ全員に対する死の宣告だ」
などと、発言そのものは正論とする意見が書き込まれている。
一方で、「言ってることは正しいがお前が言うな」という意見も根強い。ワタミが「ブラック企業大賞」を受賞したことや、入社2か月で社員が自殺し労災認定されていることなどに絡め、
「御社の『教育』制度に問題があるからそうなってるんじゃないの?」「そら25歳までにブラック企業の仕事に堪えられなくて自殺しちゃったら取り返し付かないよな」「よくこんなこと言えるなと思ったけど過労自殺したワタミ社員は26歳だった。だからこの数字になったか」
といった批判も出ている。